懐古 ページ39
『由伸の役に、立ちたいんだよ。』
山本の声の反響はとうの昔に消えた廊下を歩きながら、石川は数日前の鶴見との会話を思い出していた。用具を磨くのに残っていた石川が忘れ物の手袋を取りにダグアウトへ向かうと鶴見が座っており、なんとなく2人で話す流れになったのだ。
「お、石川くん。………はじめまして。」
「……はじめまして。」
なぜか気まずい空気に包まれた2人は並んで座り、しばらく遠くを眺めていた。
「どう？オリックスは。」
「いい感じっすね。みんなのおかげもあって馴染めてるのかなって。」
「いいねぇ、まぁでも、石川くんの力よ。」
「あざます笑 鶴見さんは？コーチ、どうすか？」
「まだこれからかなぁ、大変だろうけど、」
そして先ほどの発言である。恥ずかしくなったのか、直後に、いやチームが1番だけど！と付け足した鶴見の真っ赤な顔を石川は怪訝そうに見つめた。
「惚気は由伸ので飽き飽きなんすけど。移籍したばっかでもう腹一杯っすよ。」
「惚気てねえって。」
「はいはい。そういうことにしといてあげます。」
困ったように笑った鶴見は石川の左肩に軽くパンチを食らわせて前を向いた。出会って少ししか経たない石川だが、前者が本音だということは流石に理解できた。石川は肩を揺らして控えめに笑う鶴見を、あの日の笑顔と重ねていた。憧れの選手と中三の自分。本当の出会いは10年以上前だから、覚えていないだろうけど、でも覚えていてくれるかもなんて思っていた自分が今となっては可愛くも思えてくる。
「……はじめまして、か。」
伏目がちに呟いた言葉。視線を感じて鶴見を見遣ると目を丸くして口を開けていて、暫くしてからフッと息を吐いて笑った。
「な、なんすか。」
「いや？」
「んもぉ、ほんとになに？！」
「んふふ、なにも。」
ニヤニヤしながら何も言わない鶴見にその表情の理由を何度も尋ねるがはぐらかして変わらず口角を上げている。嬉しそうなその顔を見て口を割るのを諦めた石川は釣られてニヤけ、次の言葉にうまく反応できなかった。
「…覚えてないと思ってた。」
「ん？」
「……亮。」
懐かしい声に呼ばれて胸が熱くなる。ひと夏の思い出。
「亮、おつかれ。」
あの声に呼ばれて我に帰る。すんでのところで"由伸"を"チーム"にすり替えた理由は、自分にもわからなかった。『チームが一番とも言ってたし。』と鈍感なフリで理由付けをして自分を納得させ、ブルペンへ向かう鶴見に続いた。
○
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます！何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです！！！繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします！ (11月13日 19時) (
レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔＊さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔＊さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです！ (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です！この先の更新も楽しみにしています！ (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔＊(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます！もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー！ (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pH | 作成日時：2023年9月19日 18時
