スイスチーズの穴

漁火 ページ36

この日の鶴見は、京セラドーム大阪にいた。その隣には鶴見の腕を掴んで離さない山本の姿がある。

「もぉ、流石に離れろって！笑」

「無理です。あの時みたいになったら嫌なんで。」

「もうしないから笑」

WBC組の合流の翌日、あの日ほどの絢爛な会場ではないものの、2度目の記者会見が行われようとしていた。2人の関係や鶴見の去就について、マイアミに発つ前に球団とまとめていた話を世に放つ。スタッフがドアの前に座り、ノブに手をかけてから2人を見上げた。業務連絡に頷くが、鶴見の不安は大きくなるばかりで先ほどから冷や汗と深呼吸が止まらなかった。

「やっぱりやめた方が…」

後ろに立って見送ろうとするコーチ陣を振り返り、そう言う鶴見を山本が制止する。

「何言ってんすか。腹括ってください。」

「お前はなんでそんな………俺まじで吐きそう。」

スタッフが扉を開き、由伸を先頭に2人で中へ入る。この直前に世に放たれた情報を知る由もなく、なんの記者会見かも知らされていなかった記者たちは、突然の2人の登場に騒めき、次々とフラッシュを焚いた。









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元オリ投手鶴見 投手コーチとして契約へ



3月27日、オリックス・バファローズの山本由伸、鶴見Aが会見を開いた。その主な内容は昨年報道された2人の交際報道についてだ。本件については昨年、報道直後に会見が開かれ、鶴見本人によって説明がされていたが、今回の会見で山本がその説明を否定。さらに交際報道を認めた。

山本は「僕のためと言われましたが、Aさんにも球団にも全く僕のためになってないと説得しました。事実そうだったので。侍ジャパン本戦前に崩れてしまった後、アドバイスをもらって心身を立て直すことができましたし、公私共に、必要な存在です。」と満足気な笑みを浮かべた。

鶴見はその言葉に気恥ずかしそうに一度頷いてから、混乱を招いたことを謝罪。さらに、前回の会見について「僕が無理言ってやっていただいたことで、バファローズは悪くない。何度も止めてくださったのを僕が押し切っただけなので。」と球団を擁護。この会見の直前にリリースされたオリックスとのコーチ契約に関して自らの口で改めて発表し、コーチングをするのは楽しみだが、選手とコーチは立場もやることも全く違う。早く状況に慣れて、チームの力になれるように、と語った。

星霜→←胡乱

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