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狡知 ページ32

腕を引かれて山本の部屋まで連れられた鶴見は、キョロキョロとあたりを見回しながら会ってどうするかを考えていなかった自分を恨んでいた。ドアが閉まる音と同時に鶴見の後ろから山本の腕が伸びる。今までの自分はこういうときどうしていただろうか、と思い出そうとする間に前に回ってきた山本が鶴見の手を引いた。

「こっち。」

ベッドに座った山本の前に立たされて、手を握ったり指を絡めたり指先まで愛おしむような視線に相も変わらず溶かされそうになる。ここからどうするか、それは山本が決めることだったと我に返った。されるがまま、今までもそうしてきた。これから2人を取り巻く環境がどうなるかは鶴見にはわからなかったが、鶴見の全権は山本が握っている、それだけは決まっているのだ。鶴見自身が自分の歩む道を委ねたいと思っていたのだからこればかりは変わりようがなかった。腕を引かれて同じベッドに倒れ込む。布団の膨らみをどかしてお互いに見つめ合うと、鶴見の乱れた髪を山本の指先が掬った。

「お前さぁ……電話でなさいよ。心配したでしょ。」

「来るしかなかったやろ?」

甘い空気の中に不満を垂らすと山本は全てを見透かしていたように鼻を鳴らした。得意げに笑う山本の心の中を理解した鶴見は頬を抓る。山本は鶴見の経た感情を全て分かった上でスマートフォンを部屋に置き放していたのだった。

「いてて、」

「あまり揶揄うなよ」

「だってこうするしかなかった。」

微笑んでいた山本の顔は少し目を切った間に真剣な表情に変わっていた。

「もう会う気なかったでしょ。」

「………」

「今日来るっていうのも、宮城も颯一郎もうだも、オリックスやない選手も知ってたのに俺は知らなくてさ。」

また自分の選択が由伸を苦しめていたことに気づき、自分の学習能力のなさに落胆する。

「俺の中で、Aさんがいなくなることはないから。………だから、隠れないで。会えなくてもいいから、見えるところにいてください。」

「………ごめん。」

「あぁもう会う気ないんやなー、って思いました。」

そう言って笑い、余裕そうに見える山本の手は鶴見の手を握ってだんだんと力がこもる。Aさんのことならなんでもわかると言わんばかりの笑顔の中には隠しきれない不安が未だに見え隠れしており、相当の心労をかけてしまったと、否定できない代わりに謝罪の気持ちを込めて山本の髪を梳くように何度も撫でた。







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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます!何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです!!!繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔*さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔*さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です!この先の更新も楽しみにしています! (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔*(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます!もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー! (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pH | 作成日時:2023年9月19日 18時

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