空蝉 ページ28
「久しぶり。」
焼肉屋の前の塀に寄りかかっている鶴見を見つけ、そーっと駆け寄る。スマホに照らされた顔が山��を見上げて笑った。
「お、さちさん！お久しぶりです。」
「なんか…痩せた？笑」
「笑い事じゃないっすよー！がちで筋肉落ちました笑」
気まずい空気はどこへ消えたか、しばらく会っていなかった2人は昨日ぶりかのように焼肉屋の暖簾をくぐる。
「それじゃあお言葉に甘えてお酒行っちゃいますよ？笑」
「行っちゃいな笑」
明日のことを考えて酒を控えた山��に付き合ってソフトドリンクを頼もうとした鶴見を制し、遠慮なんてしないように言うと、目を輝かせてメニューに目を通していく。一通り注文し終えて扉が閉められたところで鶴見が近況を尋ねて、山本を避けてチームのことを話していく。飲み物が来てグラスをぶつけてから、話題は鶴見の近況に移った。
「Aは？………なんか考えてるの？」
「んー、まだ何も。」
尋ねてすぐ失敗したかと不安になった山��だが、鶴見は首を捻っておどけた様子で眉を顰めた。
「最近は？何してる？」
「家でぼーっと笑 正直、生きた心地しないっす笑」
笑いながら言う鶴見は山��にしか見せない顔をしている。スタジアムではチームの心配はあれど野球への未練は微塵も感じさせなかったが、これが鶴見の本音だった。
「野球ない人生なんて考えられなかったんで。……今も、なんか、自分だけ世の中と違うところにいる感じっていうか。」
目線と口角を段々と下げて呟いた鶴見は大きく息をひとつ吐いてから笑顔で山��に向き直った。
「まあそれでも元気なんで、問題はないんすけど笑」
次にかける言葉を迷っていると、扉がノックされてお肉が姿を表す。鶴見は気合を入れて腕を捲った。
「サンチュ3人前、確認。」
「よし、」
「ちょ！カルビから！くっつくでしょ！」
「えー？大丈夫だって。」
「ほんと、そーゆーとこっすよ！笑」
「うわ、取れねーな。網変えてもらう？」
「だから言ったじゃないっすか笑」
「ごめん笑」
「もー笑」
「ハラミうんまぁ」
「クッパは？」
「あ！忘れてた！」
「笑笑笑笑」
「あーやば、食べすぎたー」
「食も細くなった？」
「動いてないんで笑」
ご馳走様でしたーと少し頼りなく歩く鶴見を先にタクシーに乗せて見送る。開けた窓からニコニコで手を振り夜の闇に消えた鶴見を見ると、山本の話をしなかったことは正解だと、どうしても思ってしまうのだった。
○
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます！何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです！！！繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします！ (11月13日 19時) (
レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔＊さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔＊さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです！ (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です！この先の更新も楽しみにしています！ (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔＊(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます！もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー！ (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pH | 作成日時：2023年9月19日 18時
