逡巡 ページ23
「よ。」
「Aさん!」
突然現れた懐かしい顔に声を揃えたのは外野4人衆。
「あ、由伸さんなら、」
「おいっ」
「いっ……てぇ」
再会早々山本の名前を口にした元を来田が嗜める。その様子を見た鶴見は情けなさそうに笑い、来田の頭をリズミカルに撫でた。
「来田ありがとう笑 でも大丈夫、もう会ったから。」
「そーなんすか。」
「何話しました?」
「…まぁ、話したというか、……顔を合わせたって感じかな。」
山本はこれで大丈夫と安心したのも束の間、和解には至っていないと思われる鶴見の返答に4人は顔を見合わせた。
「会ったならわかると思いますけど、」
「………」
「今のままでいいんですか」
「……まぁ俺もこのままでいいとは思ってないんだけどね、色々あんのよ。」
「色々ってなんですか?」
「そこは察しましょうよ笑」
天然なのか態となのか、多分後者だろう質問を投げたのは渡部。邪気のない池田が悪気なくそれを遮って渡部は黙ってろというようにデコピンを喰らわせる。鶴見は困ったように笑って順繰りに髪の毛をわしゃわしゃしていくが、渡部はそれを躱してまたじっと鶴見を見つめた。
「………今日、見てるから頑張れよー」
その視線に居た堪れなくなって、その目と自分の間に壁を打ち立てるように遠ざかったはずの頭を追いかけて渡部の長い髪の毛をぐちゃぐちゃとその目にかけた。先ほどから何度言ったかわからない言葉を投げてその場を離れる。球界を去ってから、言い訳をしたのは、曖昧にはぐらかしたのは、これで何回目だろうか。人間として、どうにもダサい自分が取り繕いきれずに露呈していく様を感じ、この地に来たことを後悔さえもした。
───────────
「Aさん」
「お、久しぶり」
フェンス沿いに歩いて裏へ下がろうとした鶴見を呼び止めたのはいつものようにニヤニヤしてない紅林だった。
「……宮城、会いました?」
「ん?あぁ、会ったよ笑」
「なんか、言われました?」
紅林の言う意味は正直理解していた。でも生憎、鶴見はプロ野球選手を辞めて鈍感になったのだ。正確にはそのふりをしているだけだが、鈍くなくてはやっていられないほど、思ったよりもプロ野球は世間に馴染んでいた。
「いや?特に?」
そう言うと目を数回瞬かせ、考え込んだ表情を始めた紅林に嫌な予感がした鶴見はお暇を申し込もうとした。しかし一歩及ばず、紅林の声が鼓膜に届いた。
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます!何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです!!!繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔*さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔*さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です!この先の更新も楽しみにしています! (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔*(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます!もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー! (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pH | 作成日時:2023年9月19日 18時