嚥下 ページ22
一通り挨拶を終え、懐かしい面々との会話を楽しんだ後、ブルペンを出ようとした鶴見の目の先には、きらりと光るネックレスが落ちていた。遠くからでもわかってしまう自分を嘲笑しながら、それを拾い、ブルペンに残っていた宮城に手渡した。
「由伸さんの?」
「うん。そこに落ちてた。渡しといてー」
「……自分で行かないんですか。」
「うーん…由伸の精神衛生上の都合により。任せた。」
立ち去ろうとする鶴見の腕は宮城によって掴まれ、その手には渡したはずのネックレスが返戻された。
「俺嫌ですよ」
「なにが」
「2人が喧嘩したままなの。…仲直り、してくださいね。」
「……そもそも、喧嘩してないしね。」
お前は変な気を遣うようになったねぇ、と鶴見は笑いながら次のターゲット、森の目の前にそのネックレスをぶら下げる。そのネックレスを見ないふりで森は鶴見を見上げた。
「久しぶりー、オリックスはどう?」
「いい感じっす。」
「これ、由伸に渡しといてくれる?」
「え、」
森は返事をせず、宮城をチラリと見遣った。宮城は納得のいかないという様子で口をとんがらせている。なかなか受け取ろうとしない森に、ん!とジブリ映画の坊主さながらの凄みを見せると、おずおずと手が伸びてきて、ネックレスを受け取った。
「今日見てるから、頑張れよー」
そう言い残してブルペンを出た鶴見は、なんだか前にも増して掴みどころが失われたようで、解決へ導くことができなかった宮城は頭を掻く。森は隣で防具を磨く頓宮を振り返り、あの時外にいた自分には知り得ないことを聞いた。
「あの会見から?」
「あー、はい。」
「避けてるん?意外やな。」
「外にはそう見えるかもっすね。」
優しい微笑みとは別に悔しさを滲ませた口調でそう呟いた頓宮は森から目を逸らした。短期間で仲を深めた2人だが、それとこれとは話が別。2人が本当に付き合っていたこと。これは口外禁止事項となっているのだ。何か言いたげに、でも言えない、と口をもごもごさせる頓宮を見て、森は切り替えるようにキャッチャーミットを一つ叩いた。
「よーし、再開するかー」
「うす!しましょしましょ!!!」
明らかに高価なネックレスは新品の用具入れの上に置いたまま。森はそのネックレスの溢れる存在感を不思議に思いながら、グラブを嵌めた宮城に向き直りミットを構えた。宮城からの投球は、いつもより力が籠っているように感じた。
○
私的都合により、更新ゆっくりになります。
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます!何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです!!!繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔*さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔*さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です!この先の更新も楽しみにしています! (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔*(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます!もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー! (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pH | 作成日時:2023年9月19日 18時