蜿蜒 ページ12
シーズン終盤、全体練習の日の朝、いつもより騒がしいスマホをバッグに入れて車に乗り込む。いつもより忙しないスタッフを不思議に思いながらロッカーへ入った。こちらはいつもと変わらずざわざわと喧騒を纏っていたが、鶴見が入るとピタッと声が止み、鶴見は動きを止めた。周りを見渡せば、いろいろな種類の視線が鶴見に集まっている。
「Aさーん、また変なこと書かれてますよ笑」
「分かってますから。仲良すぎるだけやって。」
若手の手がぶら下げて掲げたのは週刊誌のあるページ。その見出し、鶴見は目を見開いた。
オリ山本鶴見、師弟以上の関係か
「やめなさい笑」
何も言えなかった鶴見の目の前から週刊誌を奪って丸め、若手のモグラ叩きをしたのは小田だった。若手たちは痛いっすよーと大袈裟に頭を押さえる。しかし楽しげな空気とは裏腹に鶴見の心臓は鼓動を早めた。
「変なこと考えるよな、まじで笑」
「仲良すぎるだけやんなー笑」
「相手にせんでええって。」
「こんなんほかでも普通にあることやのにな笑」
次々と上がる先輩たちのフォローの言葉に、小田を含め数名の選手は黙って鶴見を見遣り、段々と居心地が悪くなっていく。部屋の中を見渡すが、山本の姿は見えない。来る前に片付けてしまおうと、声をあげようとした鶴見だが、タイミング悪く挨拶をして入ってきたのは、山本だった。
「おはざいまーす、……なんでこんな静かなんすか?笑」
幸い週刊誌のことは知らないようで、山本は呑気に笑っている。小田から週刊誌を見せられた山本はあぁ、と合点が言った声をあげ、いつものように無邪気に笑った。
「知ってます笑」
「なんやねんもう笑」
「人騒がせなんやから!」
「なんて否定するか考えなあかんな!笑」
「どうせならおもろく行きたいよなぁ、」
どっと盛り上がりを見せたロッカーだったが、山本が次に放った一言が、静黙を連れ戻した。
「本当です。」
山本はいつも通り、スパイクの紐を結びながら、なんでもないような口ぶりで、一件落着かと息をついていた鶴見の額からは一瞬にして冷や汗が噴き出ていく。鶴見の視線を感じ取った山本は微笑んで、懇願するように呟いた。
「Aさん、俺、ちゃんと言いたいです。」
鶴見は顔を強張らせ、返事はせずに自分のロッカーに荷物を置いた。その雰囲気に山本の言うことが真実だと感じ取ったロッカーは、それ以上茶化さずに黙々と準備を進めた。
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます!何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです!!!繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔*さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔*さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です!この先の更新も楽しみにしています! (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔*(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます!もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー! (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pH | 作成日時:2023年9月19日 18時