霹靂 ページ11
10月。CSはファーストステージの佳境に入っていた。この変なタイミングで2人の仲睦まじく、練習後に互いの家を行き来する様子が"仲の良すぎる微笑ましい師弟関係"としてネットニュースになったのだ。確かに最近帰るのは必ず2人一緒にどちらかの家なのは事実で、敵意はなくなんともないものを拾っただけの小さなニュース。師弟関係とのことで大きく騒がれることはしなかったが、一部野球ファンの中でこのニュースは話題になっており、鶴見の心を強く揺さぶった。
「ひどい顔やな笑」
「…いや、」
「不安?」
「………」
余裕そうな山本は笑いながらハンバーグを口にした。その山本を見遣った鶴見は言う通り、不安だった。
「大丈夫ですよ。外には仲良いチームメイトとしか映ってないだろうし、チームにバレたとしてもそんなんで引く人らやないし。」
「まあそれもあるけど。まさか取り上げられるなんて思ってなかったからさ笑」
「他に不安なんかある?」
「……由伸と離れなくちゃいけないんじゃないかって………不安。」
鶴見は笑って誤魔化す。不安の要因がそれしか見当たらない山本は質問するが、鶴見の回答が愛おしくて表情が緩んだ。
「……嫌いになる気配全くないです。」
「集中できないから別れて、とか言われると思ってた。」
「言うわけない笑 鶴見さんが離れたいって言っても離れなかったのに?笑」
「それはさ、ちょと弱ってただけじゃん。いじるなよ。」
「あのときのAさんかわいかったなー、」
「明日ピーマンフルコースな?」
「無理!笑」
子供のような脅しに2人で笑い合う。その笑いが落ち着いたあと、鶴見はまた口を開いた。
「まあ別れたいってお前が言ったら別れるから安心しなよ。」
なぜそんなことを言うと思っているのか、好きだと日常から言動に表しているはずの山本には、鶴見の自信のなさが不思議だった。鶴見は安心させるつもりで放った言葉だが、山本は不満げな表情を見せる。
「いやいや、それだめやから。しかもそんなこと言わないし。」
「わかったから!笑 ほら、早く食えよ。」
最近よく聞こえるようになった砕けた口調に幸せを感じる。案外表情がコロコロ変わるのも、鶴見しか知らない山本の顔なのではと楽しくなる。不機嫌な真顔のまま手を止めている山本を食事に戻るように促し、鶴見も少し冷めてしまったハンバーグを口にした。
○
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます!何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです!!!繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔*さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔*さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです! (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です!この先の更新も楽しみにしています! (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔*(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます!もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー! (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pH | 作成日時:2023年9月19日 18時