３９：口にしてしまった ページ39
.
確かに 距離が近過ぎる とは言ったけど……でもやっぱり、触れられないと寂しいな。………って、こんなの私の我が儘だな。はい と頷き、大人しく前髪を上げる。
さっきまで付けていた冷えピタを剥ぐと、新しい方を付けてくれたウォヌ先輩。この時だけは、距離が近くなるのはしょうがないことで。その近さに息も出来なくなる。
あまりの冷たさに、声にならない声を上げて目を瞑った私を、先輩は笑った…気がした。目の前に彼がいるから、息が掛かったんだ。
W『 …はい、良いよ 』
先輩が遠ざかる気配がして、ゆっくりと目を開ける。
W『 …俺は洗い物とかして来るから、横になっときな 』
早く動いている心臓に抗う術を、私は知らなくて。どうしても、先輩と目を合わせることが出来なかった。大人しく頷き、ベッドに横になる。そんな私に毛布を掛けてくれた先輩は、立ち上がってキッチンの方に行ってしまった。
頭を上げて、視線だけで先輩を追う。
先輩が来てくれた時に比べたら、体調は良くなっているはずなのに。…相変わらず、彼の背中はとても大きく見えた。そして、思ってしまった。帰ってほしくない…って。
こんなこと、言葉にすることは愚か、願うことすらダメなのに。わざわざ私の看病の為に来てくれた先輩を、これ以上引き止めるわけにはいかない。………心の中では、きちんとわかっているのに。
W『 ……もう4時過ぎたし、これ以上居させてもらうのもあれだから、俺そろそろ帰るよ 』
しばらくすると、洗い物を終えた先輩が、そう口にした。
「 … 」
W『 フルーツとかゼリーとかも買っといたから、腹減ったらそれ食べて 』
「 … 」
リュックを片手に、ベッドの横に屈んで私に声を掛けてくれる先輩。
W『 ……A？』
目が合っているというのに、私が何も答えないことに違和感を覚えたらしい。
W『 大丈夫？やっぱ、まだしんどい？』
未だに体調が悪いと、心配してくれているようだ。顔を覗き込んできた彼の言葉に小さく首を横に振る。
………どうしても嘘は付けなかったし、心の中ではわかっていても、自制することは簡単じゃなかった。
ゆっくりと手を伸ばし、指先だけで先輩の上着の裾を握る。さすがに驚いたらしく、彼は私の顔と握られたところへ交互に視線をやった。
W『 ……A？どうした？』
相変わらず優しい先輩の声音に、甘えたくなってしまう。再び首を横に振った私に、あまり力はなかった。
「 ……………………………帰ってほしくないんです…… 」
.
４０：事実から目を逸らすことが出来なくなった瞬間→←３８：作ってくれたお粥
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 547人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオコ(プロフ) - るるるさん» ミョンホにはこれからもどんどん動いてもらう所存です（言い方） (2020年10月12日 20時) (
レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - ミョンホ〜(*^ーﾟ)b ｸﾞｯｼﾞｮﾌﾞ!! もう〜〜うぉぬくん…熱上がっちゃう((〃´д｀〃)) (2020年10月8日 16時) (レス) id: f77ccef066 (このIDを非表示/違反報告)
アオコ(プロフ) - るるるさん» るるるさん〜！こちらこそお久しぶりです！！チャイナ組には大活躍して頂きたい願望があるので（願望）、たくさん書けるようにか頑張ります！わかります…どんだけ美味しいお肉出てきても多分無味に感じますね… (2020年9月30日 23時) (レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - アオコさん、お久しぶりです〜！チャイナ組が登場しててめちゃくちゃテンション上がりました！おぬ君とじゅんぴとはおちゃんとランチなんて…顔面が眩しすぎて緊張でご飯喉を通らなさそうです笑 (2020年9月29日 21時) (レス) id: f77ccef066 (このIDを非表示/違反報告)
アオコ(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます〜！私もうるさい人種だからか個人的に賑やか方めちゃくちゃ好きなので騒ぎまくりましょう…？！ (2020年9月17日 21時) (レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオコ | 作成日時：2020年9月16日 22時
