36:忘れないというより、忘れたくない ページ36
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W『 …持ってて 』
「………はい… 」
返事をした声は、情けないことに掠れていた。ウォヌ先輩の手に代わって自らの前髪を押さえた自分の手は、微かに震えていた。
先輩の手によって、おでこに冷えピタが貼られる。それはとても冷たいはずなのに、私は身体も、顔も、何もかもが熱くて。この熱を今すぐに下げる方法を、誰かに教えてほしかった。
W『 …ん、良いよ、離して 』
先輩の顔が、すごく近い距離にあって。彼の吐息がふっと顔にかかった。それもまた、私の熱を上げる材料にしかならなくて。
「…っ… 」
W『 ………A?』
思わず、ボロボロになっている身体の精一杯の力を使って、先輩の肩を押した。…その時、彼の肩幅が広くて逞しいことにすら心臓が音を立てるのだから、もう、どうしようもない。驚いたように私の名前を呼ぶ先輩の声にさえもドキドキしてしまって、いっそのこと、耳を塞いでしまいたくなった。
「 ……先輩、…近いです…!……私が顔赤いの、先輩のせいですから……!」
W『 ……A… 』
しまったと思ったのは、勢い余って口を滑らせた後だった。だけど、頭の片隅で思った。
このままじゃ、先輩を好きになってしまう、と。
……何も望まないと、決めたのに。その決心が簡単に崩れ去ってしまうのが嫌で、先輩と距離を置くことしか、私の頭には浮かばなくて。……だけど。
だからといって、余計なことを言い過ぎた。こんなこと言ったところで、先輩も私も、困るだけじゃないか。
W『 ……えっと、……ごめんな 』
バツが悪そうに謝ってきた先輩に、申し訳なくて、胸がぎゅっと締め付けられた。
「 …なんで先輩が謝るんですか… 」
W『 ……A 』
「 ………………ごめんなさい、しんどいから少しだけ寝かせてください 」
明らかに、先輩は困っていた。私を気にしてくれていた彼に迷惑を掛けるなんて、私は一体、何をしているんだろう。その上逃げるなんて、卑怯以外の何者でもない。
W『 …出来たら起こすから 』
毛布を頭から被った私に、先輩はそう声を掛けてくれた。先輩の立ち上がる気配がする。
「……!」
ズルイ………ズルイよ、そんなの。
立ち上がる際に、毛布越しに私の頭をぽんと撫でた先輩。そんな彼の手の感触を、きっと私は、一生忘れないと思う。
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アオコ(プロフ) - るるるさん» ミョンホにはこれからもどんどん動いてもらう所存です(言い方) (2020年10月12日 20時) (レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - ミョンホ〜(*^ー゚)b グッジョブ!! もう〜〜うぉぬくん…熱上がっちゃう((〃´д`〃)) (2020年10月8日 16時) (レス) id: f77ccef066 (このIDを非表示/違反報告)
アオコ(プロフ) - るるるさん» るるるさん〜!こちらこそお久しぶりです!!チャイナ組には大活躍して頂きたい願望があるので(願望)、たくさん書けるようにか頑張ります!わかります…どんだけ美味しいお肉出てきても多分無味に感じますね… (2020年9月30日 23時) (レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - アオコさん、お久しぶりです〜!チャイナ組が登場しててめちゃくちゃテンション上がりました!おぬ君とじゅんぴとはおちゃんとランチなんて…顔面が眩しすぎて緊張でご飯喉を通らなさそうです笑 (2020年9月29日 21時) (レス) id: f77ccef066 (このIDを非表示/違反報告)
アオコ(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます〜!私もうるさい人種だからか個人的に賑やか方めちゃくちゃ好きなので騒ぎまくりましょう…?! (2020年9月17日 21時) (レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオコ | 作成日時:2020年9月16日 22時