両手いっぱいの愛を【br】 ページ19
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「……あの」
「ん〜？」
「どうして、私だったんですか？」
ずっと訊きたかったこと。
その質問は案外するりと口から滑り出て、私の方がびっくりしてしまった。
眠そうな顔でぼうっと本を読んでいた彼は、私のその問いかけに顔を上げると、木漏れ日のような柔らかな笑みを浮かべる。
それからぱたんと本を閉じてローテーブルの上に乗せると、大きなソファの上を手のひらでぽんぽんと叩いてみせた。
…座れ、の意だろうか。
恐る恐る近付いて、ぎこちなく彼の隣に腰を下ろす。
彼はこの国で実力を持ついくつかの公爵家のうちの、当主の一人だ。まるでそれを思わせない振る舞いや柔らかな雰囲気に、初めは本当に戦闘を好む変わり者などと噂されるかの公爵家の一人息子なのかと疑ってしまったが。
「聞きたい？なんで僕が君を婚約者として指名したのか」
「…それは、もちろん。だって貴方になら、他に相応しい女性は沢山いたはずですから」
それこそ、我こそが彼の婚約者にと望んでいた者は数多く居ただろう。
もう落ち着きはしたが、初めは他の女性からの私への視線もそれはそれは厳しかった。
そっかぁ、とゆるりと返事が返ってくる。
彼はしばらくじっと目の前にある煌びやかなテーブルを見つめると、それから眠たそうな瞳で私を見つめる。
その綺麗な宝石のようなブルーの瞳を、不覚にも綺麗だと、思ってしまった。
「……君が好きだったから」
「…えっ？」
「一目惚れだったんだって言ったら、笑う…？」
少し恥ずかしそうにはにかみながら彼は私から目を逸らした。
まさか。そんな事って。
「…冗談、じゃ」
「……覚えてない？パーティーでぶつかっちゃって、ドレス汚したこと」
「あっ…」
「…その時に、一目惚れしたんだよねぇ」
そうか、だから。
あの後、差出人のない謝罪の手紙と、私の家では到底手の届かない額のドレスが何着も家に届いた。
「…あのドレスは、」
「うん。でも、なんか自信なくなっちゃって…名前、書けなかった。ごめんね」
「い、いえ…そもそも、貴方を知らなかった私が世間知らずだったんです」
ごめんなさい、と。そう紡ごうとした口は、彼の人差し指に阻まれてしまう。
心臓が煩いのはきっと、緊張しているせいではない。
近付けられた顔に、息を飲んだ。
「…ねえ、これでも冗談だって思う？」
……ああ、やめて。
このままじゃ、この受けとめきれないほどの愛も、悪くないって思ってしまうから。
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バレンタインとか忘れてました
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まめこ(プロフ) - 陰キャ寄りの陽キャさん» まさか、コメント頂けるの本当に嬉しいので、ぜひたくさん書き込んでやってください…！嬉しいお言葉ありがとうございます、頑張ります！！ (2021年6月25日 23時) (
レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます嬉しいです…！！もちろん大丈夫ですよ、いつでもお待ちしてます！ (2021年6月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
陰キャ寄りの陽キャ(プロフ) - まめこさん» 教えて下さりありがとうございます！逆にコメントしすぎて迷惑ちゃうかなって思いました…すみません。これから応援してます!!大好きー！ (2021年6月24日 23時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - まめこさん» 最っっっっっっっっっ高でした!!!!!!!!まじで…もう！なんかこう…！（語彙力低下）本当にありがとうございました！！！（またリクエストいいかな…） (2021年6月24日 23時) (レス) id: 2c4cc0fb10 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - ゆうさん» そう言っていただけてとても嬉しいです…コメントありがとうございます。リクエスト承りました！必ず書かせて頂きます！ (2021年6月20日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ
| 作成日時：2020年11月10日 0時
