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ターミナル【kr】 ページ6

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「A、おはよ」

ゆっくりと俺の方へ向けられる視線。
ほんの少しだけ口角を上げ、心なしか嬉しそうな表情を浮かべる彼女に微笑みかけ、頬を撫でる。

「やん」
「ふふ、今日調子いいらしいじゃん。あんまり痛まないの?」
「……」

こくりと小さく頭を動かし、彼女が目を細める。
俺が来る度に嬉しそうな顔をするものだから、こちらまで嬉しくなる。

「あ、お義母さんまたあとで来るって。りんご買ってきてくれるってよ、美味しいやつ」
「……ん」

長い会話が出来なくなってから、もう1ヶ月ほどが経っただろうか。
視線や微かな動きだけで感情を読み取るのにも慣れ、コミュニケーションを図るのも随分と容易くなった。これも、毎日通い続けた賜物だろう。
今もじっと俺を見つめているのは、多分近くに来いという意味だ。

「なに?どうしたの」
「……はなし」
「え〜またぁ?俺の話聞いてて楽しいの?」
「……」

先程よりも少し勢いよく彼女が頷いた。
どんなゲームをしたとか、友達と遊んだとか、ここの店のラーメンが美味しかったとか______そんなどうでもいい話を、彼女はいつも楽しそうに聞いてくれる。
私達の話はそんなに楽しそうに聞かないわよ、とそう言っていたお義母さんにそんな事ないですよと返しはしたが、この様子では本当なのかもしれない。

彼女の手を握る。あたたかい、でも細くて白い弱々しい手。
着実に終わりへと近付いていっているのだと、その現実を実感する度に苦しくなる。
本当に彼女を失ったあと、俺はちゃんと生きていけるのかと、怖くもなる。


でも。こんな彼女でごめんね、別れよう、どうせ死ぬんだから、と自暴自棄になり酷く泣いていたあの姿が、どうしても忘れられなくて。

もう彼女がそんな風に思い詰めることがないように、最期も笑ってくれるように。
俺に出来るのは、彼女のそばでそんな時間を作る、ただそれだけだと、今はそう思っている。
必ずやってくる終わりを俺が恐れていれば、きっとそれは彼女にも伝わってしまうだろうから。


「あのさ、昨日_________ 」


たとえこの先どれだけ俺に時間があろうと、Aが一番だから。
だから、どうか。
どうか最期まで、幸せでいて。

一歩【nkm】→←泥酔【sm】



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あいら - ありがとうございました!引くほど鬼リピします! (2021年12月7日 23時) (レス) @page39 id: 508c9e96c0 (このIDを非表示/違反報告)
つきりと - 長い間お疲れさまでした…!いつも楽しみに読ませてもらいました!!長編小説のほうも大好きです!!これからも応援してます! (2021年11月24日 14時) (レス) @page39 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
あみだくじです(プロフ) - まめこさん» あっありがとうございます…!!!!! (2021年9月26日 9時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
音夢nemu(プロフ) - まめこさん» ありがとうございます、、、!! (2021年9月25日 23時) (レス) id: 927429c6cf (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あみだくじですさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…!!リクエスト承りました、お待たせしてしまうとは思いますが必ず書かせていただきます🙇‍♀️ (2021年9月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まめこ | 作成日時:2021年7月9日 22時

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