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夫婦【sm】 ページ36

大正明治あたりの設定ですが雰囲気ですので悪しからず…


.


「…おい、A」
「……?はい」


「何で言わなかったんだ」


少し不機嫌そうな表情が、長い前髪の隙間から覗く。怒っている、のだろうか。

「…え、あの、なんの事ですか…?」

心当たりがないまま、私は先程敷いた布団の上に正座をする。
これから眠るだけだったと言うのに一体私は何をしでかしてしまったのだろうか、と慌てて頭を回転させていると、それを見た彼はため息を吐きながら文机の上の書類を棚に仕舞う。
それから静かに立ち上がると、私と向かい合うようにして布団の上に胡座をかいた。

「昼間、あの人達が来たんだろ」

使用人から聞いた、というその言葉を聞き漸く先程の彼が言っていた意味を理解した。
確かに、正午過ぎくらいだったと思う。彼の伯母と______あとはどう言った関係だったか忘れてしまったが、とにかく親戚の奥様方とその娘達が数名で訪ねて来たのだ。
勿論祝いに来た訳ではない。
子供はいつだだの、それしか役に立たないんだからだの、色気のない女だだの、本当は彼も嫌がってるんじゃないかだのと、彼と結婚した私への嫌味を贈りに態々足を運んでくださったのだ。


________大地主の跡取りの彼と、もう殆ど力を持たない華族の末娘である私。
不釣り合いだなんて、そんな事は縁談を持ち掛けられた時点で私が一番よく分かっていた。
だから嫌味を言われるのも仕方の無いことだと思ったのだが、しかしどうやら彼はそれが納得いかなかったようで。

「…随分好き勝手言われたらしいな。俺が居ればこんな事にはならなかったのに…悪い」
「そんな、お仕事だったんだから仕方ないじゃないですか。スマイルさんのせいじゃないですよ」
「…でも嫌だっただろ。俺からちゃんと話しておくから」

申し訳なさそうに揺れる鋭い瞳が私を見つめる。
噂に聞いていたような冷酷な人でない事は、もうとっくに気が付いていた。少し前に見た仕事仲間と笑い合う彼はとても幸せそうで、楽しそうだったから。
でも、知らなかった。愛なんて、私への情なんて、少しもないと思っていたのに。

「…今俺が守るべき家族はお前だけだ。別に誰が相手でも、Aが我慢する必要なんかないんだよ」

分かったなと念を押され、驚きを隠せないまま返事を返す。そんな私を見て再びため息を吐いた彼は、確かに笑っていて。
少しでも彼を疑ってしまった自分が馬鹿だったと、漸く気が付いた。

*→←*



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あいら - ありがとうございました!引くほど鬼リピします! (2021年12月7日 23時) (レス) @page39 id: 508c9e96c0 (このIDを非表示/違反報告)
つきりと - 長い間お疲れさまでした…!いつも楽しみに読ませてもらいました!!長編小説のほうも大好きです!!これからも応援してます! (2021年11月24日 14時) (レス) @page39 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
あみだくじです(プロフ) - まめこさん» あっありがとうございます…!!!!! (2021年9月26日 9時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
音夢nemu(プロフ) - まめこさん» ありがとうございます、、、!! (2021年9月25日 23時) (レス) id: 927429c6cf (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あみだくじですさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…!!リクエスト承りました、お待たせしてしまうとは思いますが必ず書かせていただきます🙇‍♀️ (2021年9月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まめこ | 作成日時:2021年7月9日 22時

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