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狭い歩道を2人で歩いていると、まるで世界2人きりで取り残されたような気分になる。
そんな妄想も隣を通り過ぎる車のライトにすぐさまぶち壊されてしまう訳だが、日が沈む直前に通学路を並んで歩くこの時間が、最近の楽しみでもあった。
「……ねえ、Broooockくん」
会話の合間の沈黙に、彼女が僕を呼んだ。
その視線は少し下を向いていて、目は合わない。
「ん?」
「…あの、好きな人とか…いたりする?」
途端、心臓が信じられないほど煩くなり、鞄の持ち手を握った手に手汗が滲むのが分かった。
答えたくないならいいんだけど…と小さく笑う彼女とはやはり目は合わず、訳が分からないまま僕はえーと、なんてその場しのぎの言葉を口にする。
今この場で、その質問するの?それってどういう意味?え、でも僕の好きな人の有無が知りたいって、そういう事だよね?え?思い上がり?女の子って誰にでもそういう事訊いちゃうの_______?
パンクしそうなほど頭をフル回転させ考えるが、答えは見つかりそうにない。
でもとりあえず何か返さなきゃ、と慌てたままもう一度彼女を見た。今度は、目が合った。
「Aちゃん」
やってしまった、と気付いた頃にはもう時すでに遅し。え?と瞳を瞬かせる彼女に、僕はその手を取って足を止めた。
「僕、Aちゃんが好き。ずっと…ずっと好きだった」
「…………え、あ…?」
車が車道を走り抜けた。
どうしよう、困らせてる。でも、離したくない。そんな僕をからかうように街灯が点滅する。
「あっ……あのね!!」
バッと彼女が勢い良く顔を上げた。
泣き出してしまいそうなのに、どこか嬉しそうな、そんなちぐはぐな表情に見えた。
「私も、ずっと…」
__________ずっと好きだった、と。
彼女は確かに、そう言った。聞き間違いじゃなく、たしかに。
つまり、それは。
「…僕たち、ずっと両想いだったって事?」
「……そう、だね」
両片想いって言うんだっけ、と彼女は恥ずかしそうに笑うと、僕の手をぎゅっと握り返す。
「…Aちゃん」
「…はい」
「僕と、付き合ってください」
小さな手から伝わる生ぬるい体温が、風で揺れる前髪が、はにかんだその表情が、どうしようもなく愛おしい。
それは、想うだけでは決して感じられなかったものばかりだった。
「はい、喜んで」
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あいら - ありがとうございました!引くほど鬼リピします! (2021年12月7日 23時) (レス) @page39 id: 508c9e96c0 (このIDを非表示/違反報告)
つきりと - 長い間お疲れさまでした…!いつも楽しみに読ませてもらいました!!長編小説のほうも大好きです!!これからも応援してます! (2021年11月24日 14時) (レス) @page39 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
あみだくじです(プロフ) - まめこさん» あっありがとうございます…!!!!! (2021年9月26日 9時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
音夢nemu(プロフ) - まめこさん» ありがとうございます、、、!! (2021年9月25日 23時) (レス) id: 927429c6cf (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あみだくじですさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…!!リクエスト承りました、お待たせしてしまうとは思いますが必ず書かせていただきます🙇♀️ (2021年9月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年7月9日 22時