返済恋愛【kr】 ページ12
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突然だが、私は馬鹿だ。特に恋愛が絡むと頭が弱くなるタイプの、馬鹿。
だから考えなしにパチカス彼氏の借金の連帯保証人になってしまって、まあそれで愛する彼氏が助かるならいいか〜とか私が養ってあげればいいし〜とかそんな平和ボケした事を考えていたわけであって、かつ自分がただの金ヅルである可能性に気付けなかったのだ。
恋が冷めた後にそれに気付いてももう遅い。
私の眼前には消えた元カレが残した多額の借金を取り立てに来たスーツに金髪の怖い男と、私が連帯保証人である事が記された書面のみ。
つまるところ詰みなのである。
「……で、どう?すぐ返せそう?」
「あ、え、いや……無理、です……」
「いやぁ、そりゃそうだよね。こんな大金」
分かってるなら聞くな…!と言いたい気持ちをグッと堪え、私は目の前で呑気に出された麦茶を飲むその男をちらりと見やる。
怖い。めちゃくちゃ怖い。怖いけど、たとえここでこの男に襲われようが八つ裂きにされようが、私に文句は言えない。何ならもう、私には人権が無いと言っても過言ではない状況だ。
男が中身のないコップを机に置いた。
細く鋭い瞳が、眼鏡の奥から私を射抜くように見つめている。
「んー…じゃあ、俺から提案なんだけど」
かと思えば、男が今度はにこりと胡散臭い笑みを浮かべる。
なんですかと問う声は当たり前ながら震えていて、まるで走馬灯のように色々な記憶が頭を駆け巡る。
お父さんお母さん、親不孝な娘でごめんなさい。私はここで終わります。部署の先輩、良くしてくださってありがとうございました。どうかお元気で_______
「キミ、俺の彼女にならない?」
「……はえ?」
「そしたら借金もチャラにするし、痛い事も危険な事も何もないよ。まあ、今までみたいな普通の暮らしは出来なくなるだろうけど」
素っ頓狂な声を上げた私の事など気にもせず、それが今俺に提示できる最善策だけど、と彼は机の上で両手を組む。
失礼ながら、その胡散臭い顔をまじまじと見てしまう。
金髪に、垂れ気味なのに何故か鋭い瞳。それと、胡散臭さを助長する眼鏡。楽しそうに弧を描く口元。端的に言えば、整った顔をしている。
……もう一度言おう、私は馬鹿だ。だから、相手がイケメンで安全が保証される上に借金が片付くならならまぁいいか、などと平和ボケした事を安易に考えられるのである。
「……よろしく、お願いします?」
「うん。よろしくね、Aちゃん」
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あいら - ありがとうございました!引くほど鬼リピします! (2021年12月7日 23時) (レス) @page39 id: 508c9e96c0 (このIDを非表示/違反報告)
つきりと - 長い間お疲れさまでした…!いつも楽しみに読ませてもらいました!!長編小説のほうも大好きです!!これからも応援してます! (2021年11月24日 14時) (レス) @page39 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
あみだくじです(プロフ) - まめこさん» あっありがとうございます…!!!!! (2021年9月26日 9時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
音夢nemu(プロフ) - まめこさん» ありがとうございます、、、!! (2021年9月25日 23時) (レス) id: 927429c6cf (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あみだくじですさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…!!リクエスト承りました、お待たせしてしまうとは思いますが必ず書かせていただきます🙇♀️ (2021年9月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年7月9日 22時