おめでとう、大好きな人【kn】 ページ1
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「誕生日おめでと〜!!」
パン!と少し遅れて鳴らされるクラッカーに肩を揺らしながら、彼は心底驚いたようにぱちぱちと目を瞬かせた。
よしよし、びっくりしてる。
「…え?なに、え?」
「なにって誕生日でしょ、きんとき」
「いやそれは分かってるけどさ…え?この料理どうしたの…?」
まさかAが…?とクラッカーを鳴らされた瞬間よりも驚いた顔をする彼の視線の先には、机に並べられた料理達。
失礼だなと言いたいが彼がこんな顔をするのも無理はない。何せ私、料理が壊滅的に出来ないのだ。
そんなダークマターしか生み出せないような彼女にまともな料理と共に出迎えられたら、そりゃびっくりもするだろう。気持ちは分かる。
「ふふふ、私が作りました!!」
「えっガチ?」
「……まあ、このメニューしか作れないんだけどね」
友達と一緒にこのメニューだけをひたすら練習して、やっとこのレベルになったのだ。
遠くから見る分には立派だが実は近付くと粗が目立つし、かなり練習したけど残念ながら元が悪すぎたのか完璧にはならなかった。無念である。
「なんかコソコソしてるなとは思ってたけど…料理練習しに行ってたんだ」
「…バレてた?」
上着を脱ぎながら彼が机の上を覗き込んだ。
近くで見たらそんなに出来良くないよ、と私が笑えば、彼はそんな事ないよと振り返る。
「美味そうだよ、ほんとに」
「でもほら、料理上手だったらもっと手の込んだの作れただろうし…こんなの威張れるほどのものでもないな……って」
「なんで?だって俺の為に頑張ってくれたんでしょ?」
うん、と頷くと、そのままあっという間に腕の中に捕らわれてしまった。
いつもはしない、少し力のこもった抱き締め方だった。
「そんなん嬉しいに決まってんじゃん…威張っていいよ、すごいよ」
「……ほんと?」
「ほんと!」
ぎゅーっと苦しいくらい抱き締められて、思わず笑い声がこぼれた。
腕を離した彼に唇を奪われ、やり返すように背伸びをしてキスをして、また笑う。
ああ、これじゃもうただのバカップルだ。
「…ありがとう、本当に」
「どういたしまして!」
早く食べよう、と主役を席に着かせて、飲み物を用意する。
でも、料理を見渡して幸せそうに笑みを浮かべる可愛い恋人を見るだけで、もうお腹いっぱいかもしれない。
「……ね、A」
「ん?」
「来年も、またお願いしていい?」
「…んふふ、ばかだなぁ。当たり前でしょ」
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おめでとうございます。セーフです。
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あいら - ありがとうございました!引くほど鬼リピします! (2021年12月7日 23時) (レス) @page39 id: 508c9e96c0 (このIDを非表示/違反報告)
つきりと - 長い間お疲れさまでした…!いつも楽しみに読ませてもらいました!!長編小説のほうも大好きです!!これからも応援してます! (2021年11月24日 14時) (レス) @page39 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
あみだくじです(プロフ) - まめこさん» あっありがとうございます…!!!!! (2021年9月26日 9時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
音夢nemu(プロフ) - まめこさん» ありがとうございます、、、!! (2021年9月25日 23時) (レス) id: 927429c6cf (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あみだくじですさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…!!リクエスト承りました、お待たせしてしまうとは思いますが必ず書かせていただきます🙇♀️ (2021年9月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年7月9日 22時