愛とか。 (ページ20)

今日:340 hit、昨日:2,424 hit、合計:15,991 hit

２０ページ20

.

樹「はあ〜ぁ…ねみ…」

エレベーターで私たちの部屋がある階まで上っている途中、樹は特大のあくびをかまして体を伸ばした。そんな彼を横目に腕時計を見ると、午前１時を回っていた。どうりで人通りは少なく、閑散とした岐路だったと振り返る。

部屋の階に到着すると、2人でエレベーターを出た。なんてことない最近の私たちだけど、胸が高鳴る。この後、どうするんだろう。私は…どうしたいだろう。

『…わー、明日も仕事か』

樹「え、明日出社すんの？」

まじかよ、と前髪をかきあげる樹。『もうすぐプレゼンあるし、準備しようかなって』と私もなんだか落ち着かなくて、俯いた拍子に垂れた髪を耳にかける。…もしかして、樹から誘われるかもしれなかったのに、事前に遮ってしまったかな？ドキドキしながら樹を覗き見る。少し考えている様子の樹がこちらを向いた。

樹「もう遅いけど、俺んち来ねえ？」

出勤時間、決まってないっしょ。と言って私を再び覗き見た。

『…いいの？』

樹「ん、Aがいいなら」

そう言って私の頭を撫でる樹。
彼は気づいてないかもしれないけれど、名前を呼ばれたのは久しぶりだ。なんて、学生でも思わないようなピュアな感情を持って、2人で彼の部屋へと向かった。

控えめに閉じた部屋は、樹から香るシトラスの香りがした。

.