愛とか。 (ページ2)

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『今日、うち寄ってく？ママがそろそろ彼氏呼べって』

樹「ん、今日は用事あるし。来週でもいい？」

スマホを見ながら樹はそう答える。スケジュールの埋め合わせをしてくれる彼にすっかり心を許してしまっていた私は、二つ返事をした。付き合い出して半年、卒業まで３ヶ月。樹が県外の大学を受けることを知ったのは、こんな他愛のない話をして２日経ってからだった。

『なんで教えてくれなかったわけ？』

樹「なんでって、……県外って言っても東京で、ここから２０分もあれば俺ん家行けるから」

そういう問題じゃなくて、と話を伸ばすけれど、樹のあからさまな嫌な顔と小さなため息にこれ以上何も言えなくなってしまった。その日は一緒に帰ることはなく、樹に連絡することもなく先に帰路を辿った。途中でメッセージが届いた音がなったし、なんなら着信もあったようだけど、その通知に無視を決め込んだ。夜、優吾が家に来て「樹がウルセーから構ってやってくれよ」とかいうけれど、私の気持ちを落ち着かせる時間が欲しくて、少し距離を勝手に置いているだけだ。

『……もう少し待って。気持ちを整理させてよ』

しょうもないことで、って今では思うけれど、あの時の私はそのくらい未熟で、樹が全てだった。

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