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互角の勝負 ページ9

「お前の話はこれのことか」

 シャーロックは煙草を咥えながら懐に手をやり、不恰好に膨らんだ小さな封筒を抜き出した。
 ああ、やってくれたねマフィン君。一目でUSBメモリが入っていると分かり、僕は溜め息をつく。寄りかかった椅子の背もたれは綿が抜けて硬かった。

「そう。それを返して欲しいんだよね」
「返して欲しい? 妙だな。これは俺がハリーから『もしもの時に聞いて』と預かったものだぞ。理由(わけ)を言え」
「嫌だね。どうせ検討も付いてる癖に」僕は舌を鳴らした。
「意地悪なやつ」
「そうか? お前が俺の立場なら同じことを言うと思うがな」

 シャーロックは不思議の国のチェシャ猫のようにニヤニヤと、胸をえぐるような嫌な笑みをした。

 さすがにとても腹が立ち、僕はすぐさま傍の机からペーパーナイフを取って投げつけた。
 木の柄は重く刃も分厚いが、彼の瞳に届くまで〇.一秒とかからない。
 しかし、ここは彼の本拠地だ。彼は身を捩ってそれを避け、体の重心を戻しながら、ナイフが刺さった壁にかかる死体の写真入り額縁に手をかける。見る間にそれが飛んで来た。
 僕は椅子を滑り降り、耳に風を感じつつ凶悪な回転をやり過ごす。同時に床のガラクタから黒く厳ついベレッタPx4を拾い上げ、トリガーに指をかける。
 けれど彼も彼で、額縁で隠していた壁の凹みからコルト・パイソンを抜き出していた。黒光りする九ミリの銃口が真っ直ぐ僕を向いている。

 全く、いつもいつもこれだ。僕は呆れて肩を落とした。
 いつになったらこの男を完全に出し抜くことが出来るのだろう。
 参ったね、本当は今すぐにでも撃ちたいけれど、彼と心中なんて最悪だからな。

 僕はしばらく考えて、結局、やれやれと銃を振りながら椅子に座り直した。

「お前がここまで躍起になるのも珍しいな」
「ああ……ちょっと色々堪えてね。もう歳かな」

 はっ、とシャーロックは笑った。

「おかげで俺は楽しんだ。『英国が誇る生きた伝説の秘密諜報員(エージェント)、ロビン・フッドの弱みは何だろう?』これほど美味(うま)い謎があるか。俺はそれこそ、寝る間も惜しんで考えた。ハリーに感謝しながらな」
「はいはい、夢いっぱいのメモリをもらって良かったね」
「国家機密でないことは分かっている」

 シャーロックはやけくその僕を無視して続けた。

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設定タグ:シャーロック , オリジナルBL , 腐女子   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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シャーロック(プロフ) - Riruriさん» うわ〜!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます!お待ちしておりますのでぜひよろしくお願いします!感謝しております! (11月26日 0時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ネット販売おめでとうございます…!生憎金欠なので、お小遣い入ったら光の速さで購入させていただきます。本当は今すぐにでも欲しいですが……無念。これからもシャーロック様としての活動、カイマナふぁみりー様としての活動共に陰ながら応援しています! (11月24日 16時) (レス) id: fa82e694ee (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» お返事遅くなってすみません!実は数日前から私が脳梗塞なんじゃないかって家族と大騒ぎしていて、とても余裕がなかったんです(汗)ハロウィン短編を喜んで頂けてとても嬉しいです。敵対関係にないのに互いに踏み切れない二人。歯痒いけれどもそれがいい! (10月15日 22時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 別世界線の二人も中身はそのままなのに設定が違うだけでここまで関係性も変わっていくのかと驚きましたし、それと同時により二人のことが大好きになりました💞素敵な作品を読ませてくださり本当に有難うございます!!読みにくい長文コメント失礼致しました💦 (10月11日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ハロウィン編、物凄く素敵です…!!新たな設定の二人と知り、どうなるのかとワクワクしながら読み進めていきましたが、そのワクワクを遥かに上回る程の面白さ、“尊さ”でさっきから溜め息が止まりません笑 物語の進め方、まとめ方も凄く美しくてただただ尊敬です…… (10月11日 13時) (レス) @page35 id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シャーロック | 作者ホームページ:https://kaimanafamily.wixsite.com/welcome-to-sanctuary  
作成日時:2022年11月14日 17時

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