49 ページ3
目が覚めたとき、真っ先に視界に広がったのは白い壁。部屋の中は見慣れた薄暗さ。
この時間帯に目が覚めることは、今やもう身体に染み付いていた。
寝起きの頭の中でぼんやりと考える。
＿＿＿なにか嫌な夢を見ていた気がする。
とは言っても、夢という薄っぺらい記憶は、目が覚めると同時に消えていくものだ。
思い出そうとすれば蘇るだろうが、やめておこう。
嫌なものだとわかっていて、自ら踏み出すことにはなんの意味もない。
体制的に目にかかった自身の髪が鬱陶しく思える。
眠気はもうないものの、重い身体。
自然と零れたため息に目を閉じる。
「………………。」
ふと、隣にあるはずの温もりに触れたくなった。
＿＿＿俺にとって全てを包み込んでくれそうな存在。
きっと穢れを知らないその目を伏せて、すやすやと眠っているはずだ。
目を閉じたまま体の向きを変える。
そのまま、伸びた手が手探りに動いた。
「………………？」
しかし、いつまでも空を切る手がもどかしくなって目を開ける。
……その一瞬で、不安と焦燥感に襲われる。
＿＿＿＿＿Aがいない。
その事実に咄嗟に身体を起こして、辺りを見回す。
それでも視界に入るのは、見慣れた部屋の光景だけ。
この薄暗くて静かな空間が…微塵も感じられないAの存在が、心臓の鼓動を早まらせる。
手に触れたシーツは、求めていた温もりとは正反対に冷たかった。
昨日と似た状況。
まとまらない思考を必死に巡らす。
それでも頭に浮かぶのは最悪なものばかり。
(逃げた…のか？俺が気づくこともなく？)
だとしたら、今すぐにでも探し出して連れ戻すしかない。
咄嗟の判断で確証もなく動くのは愚策だとわかっていても、そうは言っていられなかった。
＿＿いてもたってもいられなくなった身体が勝手に動き出す。
昨日まで大人しくしていたのは俺を完全に油断させる為？全部が逃げ出す為の演技だったのか？
考えたくもない想像をかき消すように、寝室のドアが大きな音を立てて閉まる。
ずっと頭から離れないAの顔。
酷く取り乱しているせいか、いつもの廊下がとても長く感じる。
(ダメだ…お前を失ったら俺は……！)
ようやくたどり着いたリビングのドアを、そのままの勢いで開ける。
「………………っ！」
眩しい太陽の光と共に目に入ったのは、紛れもないAの姿だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1301人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
如月 - 荼毘さんかっこよすぎます！続き書いてくれると嬉しいです！(*´∇｀*) (5月15日 21時) (
レス) @page22 id: 144d29d1f5 (このIDを非表示/違反報告)
ふふ - 続きを正座待機。最高かよ!!!! (2023年4月14日 17時) (レス) @page22 id: bc020e7b09 (このIDを非表示/違反報告)
よっすぃ - 続きが見たいです……… (2022年12月16日 7時) (レス) @page5 id: 93ab21d600 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬 - 続き…続き…続きｦ… (2022年12月5日 8時) (レス) @page22 id: 1a035e157b (このIDを非表示/違反報告)
かのん - 続き…書いてくれると嬉しいです… (2022年12月4日 20時) (レス) @page22 id: 19794637f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：刹那カイ | 作成日時：2020年1月19日 20時
