ショートストーリー集

創始者 ページ29

『お母さん。私は、大丈夫だよ。存在が消えても、お母さんの中に存在してるよ。』

世界に無視され続けた物語が言う


『お母さん。私達を生み出すために、お母さんが犠牲になることはないんだよ？』

一人が二人になった物語が言う


『私達がいなくても、母様の存在を認めてくれるヒトはいるんですよ。』

別の世界から来た物語が言う


『だから、安心して？お母さんは一人じゃないんだよ？』

聞こえるものが聞こえず聞こえないものが聞こえる物語が言う


『母さん、俺達、すっげー感謝してる。』

ヒトではない存在が言う


『私達、母サンノ事、大好キダヨ。』

化け物になってしまった物語が言う


『だからこそ、私達はお母さんの幸せを願って、お母さんの中に感情を返すよ。』

ヒトとは違う運命を背負った物語が言う


『私達を生んでくれて本当にありがとうございます。』

存在を知ってもらえた物語が言う


『僕達を、忘れないでね』

愛を受け入れてもらえなかった物語が言う






、




『母さん。お別れです。どうか、お幸せに』




、




全ての物語がそう告げると、私の中に消えていった





、




そして、全て思い出した

私は、現実の世界で、誰からも必要とされない生活を送っていた

いや、そう勝手に思い込んだ生活をしていた

そして、自ら命を絶とうとした

そして、上手く死ねず

植物状態となった

私は、目覚めようと努力はせず、この真っ暗な世界で、自分を犠牲に物語をつくりはじめた

存在意義を確かめるように


しかし、それも終わりのようだ


戻ったばかりの感情で、思いっきり泣いた



　 END

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