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いつも、
今回も素敵だねなんて、微笑んだ彼女。
あ、そうだ。
沖縄にも連れて行ってあげられなかったな。
結婚式のプランを考えてた時間はそれはもう夢見心地で、オリジナル曲まで書き下ろしちゃって。
「…僕だけ残して、ずるいよ。」
ーーー『何言ってんの、
私だってまだ生きてたかった。』
そんな声が聞こえた気がして、涙が止まらなかった。ごめんね。
『孝明くんこそ、ずるいよ。』
酷い耳鳴りだ。
どこかから君の声が聞こえてくるんだ。
なにこれ、有り得ない。
でも、仮にもしも彼女が僕のこと、見てたら。
いや、もしかしたら
彼女は死んでなんかいないかもしれない。
じゃあ、あの指先まで赤く染まり、
いくら声を掛けても目を開けなかったのはだあれ。
後ろから、君の視線を感じた。
「…いるんでしょ??」
『ふふ、ずっと見てたよ。大好き。』
目を合わせたら
もうまともで居られなくなるような気がして、
彼女の顔も、髪も、存在すらも、見られなかった。
「僕も大好き。
ねえ、いるなら戻ってきてよ寂しいよ。」
『ううん、もう戻れないの。
これが私の運命だったの。』
「そんな、」
彼女はそんな僕の言葉を遮って続けた。
『あのね、私死んでから分かったの。』
「なにを…!!」
『幸せ。』
冷たいものが僕の頬を撫でた。
冷たくて、氷みたい。
君の細い指かな。
「やめてよ…寂しいよ…」
『大丈夫だよ、私ね
孝明くんの事寛ぎながらずっと見てるんだもん。』
「僕が死んだらまた一緒に笑える??」
『面白い質問だね、
でも私は孝明くん頑張ってるし、私みたいに中途半端で人生終わって欲しくないもん。』
「中途半端って…Aは違う」
『あ、それと孝明くん』
「…なに、」
嗚咽が僕の言葉を邪魔する。
『ふふ、孝明くんがこっちに来ても嬉しくなんてないからね。
あとさ、
もう私の事あんまり引きずらなくてもいいよ。
新しい彼女と出会って、孝明くんが私にしてくれた事を私の倍でしてあげて、素敵な結婚式あげて、可愛い子供に恵まれて、幸せになってね。』
「待って、」
振り向いた途端に強い風が吹いた。
もう声も聞こえない。
その翌日僕はコチョウランを探し回った。
花言葉に詳しかった彼女に捧げたくて。
【コチョウランの花言葉はあなたを愛しています❀】
たとえ、別の世界に存在していても
きっと、僕は一生愛を謳う。
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