今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:894 hit
小|中|大
7 ページ13
剣持さんが目を見開くのを冷静な、なんとも言えない気持ちで見ていた。まさか、死ぬ前に自分の自’殺念慮の元凶に出会うだなんて、誰が予想していただろう。
気づけば、剣持さんはまた先ほどと同じような小さな微笑みを浮かべて、
「そうだったんですね。つまり、僕の教えである、人は全てを捨てて虚空へ帰るべきだという考えが、間違って伝わっていると。なるほど。それでこのようなことになるとは。人間とは本当に予測ができない生き物ですね。」
そこまで言って、剣持さんは綺麗な真顔をこちらに見せると、
「僕の信者が、ご迷惑をおかけしました。」
ここまで綺麗な謝罪、見たことがない。深々と折られた腰がきっかり3秒後にあるべき姿に戻るまで、私は不思議な気持ちでそれを見ていた。
起き上がる勢いでフードが取れて、剣持さんの紫色の綺麗な髪があらわになる。彼はそれを丁寧に戻し、また滝の方に目線を動かした。
「何か聞きたいことは?なければ私は身投げの準備をしますが。」
彼はしばらく黙っていた。黙っていられるのではこちらも動きようがない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
10人がお気に入り
10人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:漣刹那 | 作成日時:2023年3月22日 12時