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剣持さんが目を見開くのを冷静な、なんとも言えない気持ちで見ていた。まさか、死ぬ前に自分の自’殺念慮の元凶に出会うだなんて、誰が予想していただろう。
気づけば、剣持さんはまた先ほどと同じような小さな微笑みを浮かべて、

「そうだったんですね。つまり、僕の教えである、人は全てを捨てて虚空へ帰るべきだという考えが、間違って伝わっていると。なるほど。それでこのようなことになるとは。人間とは本当に予測ができない生き物ですね。」

そこまで言って、剣持さんは綺麗な真顔をこちらに見せると、

「僕の信者が、ご迷惑をおかけしました。」

ここまで綺麗な謝罪、見たことがない。深々と折られた腰がきっかり3秒後にあるべき姿に戻るまで、私は不思議な気持ちでそれを見ていた。
起き上がる勢いでフードが取れて、剣持さんの紫色の綺麗な髪があらわになる。彼はそれを丁寧に戻し、また滝の方に目線を動かした。

「何か聞きたいことは?なければ私は身投げの準備をしますが。」

彼はしばらく黙っていた。黙っていられるのではこちらも動きようがない。

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作者名:漣刹那 | 作成日時:2023年3月22日 12時

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