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その手、掴んでもいいかな?1 ページ1

私はこの世が嫌いだ。道徳の授業で習うことなんて全部幻想で、綺麗事で。人の心は信じるべきじゃなくて。だから、友達の前では作り笑いでやり過ごす。自分は幸せだ、この世界が大好きなんだと、嘘を吐き続ける。最っ高に気分が悪い。反吐が出る。
権力を振り翳して、まるで自分が全て正しいみたいに思い込んでる教師が嫌いだ。
子供を所有物みたいに扱って、レール敷いて第二の人生を歩ませる親が嫌いだ。
今日だってそう。なんら楽しくない。学校に行って将来使わないようなことを授業で教わって、友達と生産性のない話をして、帰って怒られて。こんな世界なら。こんな人生なら。投げ捨ててもいいと思う。


放課後。出ても出なくてもいいような部活をサボって誰もいない教室で黄昏ていた。窓際の一番後ろ。主人公席。この席、私なんかがとっていいはずないのに。でも外の景色を眺めるのにはちょうどよくて、夕暮れに染まっていく茜色の空をぼんやりと見ていた。
「Aさん?」
急に名前を呼ばれて驚いて顔を上げる。教室の入り口にはクラスの中心人物が立っていた。剣持刀也。
「剣持くん。どうしたの?忘れ物?」
私はいつも通り笑顔を作って返す。完璧。
「ええ、僕はそうですけど。あなたこそどうしたんですか?」
探るような視線。私はこいつが苦手。やることはしっかりやりつつ、ふざける時は全力でふざける面白いやつ。それなりに成績がよくて、剣道も強い。ルックスは二次元から飛び出してきたみたいに完璧。かっこいいくせにスイーツが好きで可愛いところもあって、笑い方は清楚ときた。そんなやつだから、言うまでもなく女子からのモテ度は半端ない。だけど。この作り上げた私の本心を見透かしたような翡翠色の瞳が、私には怖くて仕方がない。
「いや、夕暮れ綺麗だなって思って眺めてた」
すると剣持くんは口角を少しあげて
「確かに。今日夕日すごい綺麗ですよね。」
西日に照らされたイケメンくんは、普通の女の子だったらときめいてしまうほどにかっこよかった。
気づけば剣持くんはこちらに近づいてきていた。え?なに?怖いんだけど。
「Aさんって掴みどころないですよね」
そう言いながら私の前の席に後ろ向きに座る。そりゃそうでしょうね。掴まれても困るし。
「そう?」
「そういうとこです。掴まれたくないから掴みどころのないキャラにしてるんでしょ?」
やけにズバッと踏み込んでくるじゃん。剣持くんも掴みどころないと思ってたけど案外そうでもないのかな。

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作者名:漣刹那 | 作成日時:2023年3月22日 12時

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