第372話 人形は、止まれない ページ23
NOside
桜「っそれはAのせいじゃ…！！」
貴『私のせいですよ。』
間髪入れずに、Aが否定する。
先程の芝居がかった台詞から、感情が消えた。
貴『私が生まれなければ、両親は死ななかった。』
整った笑みが少し歪んで、声が震える。
悲しそうに俯き、目線を逸した。
桜「そんな訳っ…！」
貴『あるんですよ。』
わざと被せるように、否定する。
そんな可能性は無いとでも言うように
…そんな話は、聞きたくないとでも、言うように………
だって、そうでなきゃ
貴『……そうでなきゃ、なんでパパとママが死ななきゃいけなかったのか、分かんないんだもん……』
まるで迷子の幼子のように、不安げに、淋しげに呟く。
行き場所なんてどこにもない。
導いてくれる人なんて、どこにもいない。
独りぼっちで、どうしようもなくて
呼び止めてくれる人もいなくて
助けを求めることもできず、ただ、進む事しかできない。
貴『私のせいじゃないなら、私が悪くないなら…
なんで、なんでいっつも私ばっかりこんな目にあわなきゃいけないの…？』
彼女に対して世界はあまりに無情で。
それでもそう考えるたびに被害者面の自分に嫌気が差す。
貴『人なんて殺したくない』
でももう止まれない
貴『戦いたくない。痛いのもいや…』
それでも戦わなくては
貴『人が死ぬのなんて見たくない……』
いつもいつも、誰かが死ぬのは彼女の目の前で
貴『苦しい、寂しい……………もう生きてたくない……』
もう疲れきって、それでも止まれない彼女が止まるには、もう二度と動くことがないよう、息の根から止めるしか────…
蹲って座り込むAに、桜備はなんと声をかけていいのか分からない。
"生きていたくない。"
その言葉は、桜備の心に深く突き刺さった。
遅かった。
手を差し伸べるには、何もかも。
もっと前に声をかけていたなら…
それこそ、7年前のあの日。
必死に笑って取り繕う彼女に手を差し伸べられていれば。
少しは、未来は変わったんじゃないか
…少なくとも、こんな、悲惨な状態には───……
"『私の手じゃ、2体は抱けないから』"
今更、昔の事を思い出した。
テディベアを持って、ニコッと笑った時のあの子の表情。
口元は優しく、柔らかく笑っているのに
その目は酷く不安げで、顔は青く血の気が引いてて。
必死に、人形に縋ってた。
どうして自分は、あの時手を────………
…なんて、そんな事を考えても意味はないというのに。
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カスタード - いつも楽しみとして読ませていただいています！夢主ちゃんの性格がグサリと心に刺さりました！これからも応援してます！ (8月18日 20時) (
レス) id: 82acadb6d2 (このIDを非表示/違反報告)
うま - じっくり読ませていただいてます！更新頑張って下さい！！ (7月16日 0時) (レス) id: 4d8aeac2a6 (このIDを非表示/違反報告)
3度の飯より推しが好き(プロフ) - ちるちるさん» コメントありがとうございます！めっちゃ嬉しいです！更新頑張ります！！(血涙) (2023年3月8日 0時) (レス) id: e76870b0ae (このIDを非表示/違反報告)
ちるちる(プロフ) - めっちゃ面白かったです！！続きが楽しみです😊更新頑張ってください‼️ (2023年3月7日 19時) (レス) id: ace1fac0f2 (このIDを非表示/違反報告)
3度の飯より推しが好き(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます！かなりの不定期更新となってしまっていますが、気長に待っててくれると嬉しいです！ありがとうございます！ (2023年3月5日 22時) (レス) id: e76870b0ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3度の飯より推しが好き | 作成日時：2022年12月15日 15時
