喜劇で悲劇の人形劇第五幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ40)

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第239話拭えない可能性ページ40

NOside

皇「あなたも…アドラバーストだと、そう言われたそうですね。」

貴『……ええ』

アドラバーストとは、本来第三世代能力者に極まれに生まれるもの。

……けれど、Aは…

皇「緋雁隊員は第二世代能力者だと聞いていますが…」

貴『……はい、間違いありません。

……けれど、焔ビトの声が聞こえるこの力が、そうだと言うならば、私はアドラバーストなのでしょうね。』

Aの言葉に皇王は顎を触る。

今まで文献にもそんな能力は記されてはいなかった。

そんな力を持つ方は初めてですと王は考えるように言った。

皇「何故、申告しなかったのですか」

貴『…突然焔ビトの声が聞こえると言っても、困惑させてしまうだけだと思ったので。』

私自身、こんなものは幻聴だと考えてましたからとAは気まずげに話す。

貴『奴は私を伝導者に最も愛された子だと言いました。

…もし彼等の言うアドラバーストが伝導者に愛される者の事を言うのであれば、森羅を欲する理由も頷けます。』

主の愛した子供を、信徒が集めようとするのは何ら不思議な事ではない。

Aの筋の通った意見に、皆なるほどと頷いた。

貴『……奴の言葉が本当ならば、私も、私の両親も白装束に組みしていた事になります。

私達があんな人殺し集団にいただなんて事は、信じたくはないですが……

もし、私がもう行きたくないと泣いた事で、両親が私と共に白装束から逃げようとして、蟲を入れられ死んでしまったのだとしたら。』

辻褄が、合わないわけではない。

人間の記憶というものは、実に曖昧なものだ。

いくらでも誇張して残るし、都合の悪い部分はすぐ消えてしまう。

貴『もし、もしも、私が白装束にいた頃の記憶を封じ込めているのだとしたら』

信じたくはない。

…でも、あり得ない話では、まったくない。

ギュウッと両腕を握りしめ、Aは小さく震えながら俯く。

貴『あんな奴らの仲間になるくらいなら、投獄されて殺される方がマシだ…！！』

震えた声で、Aが叫ぶ。

絞り出すように、迫真に。

そこにいる誰もが彼女は彼等の仲間ではないと確信できた。

貴『……私は、森羅は第八にいるのが一番安全だと考えています』

まだ少し震えた声で、Aが言った。

掴んでいた腕を放して、体を起こして。

訴えかけるように言った。

貴『烈火の様に、特殊消防隊に伝導者の一味が潜んでいる可能性があります。

その点、第八は少数精鋭。奴等が潜んでいる可能性も、低いと思うのです。』