喜劇で悲劇の人形劇第五幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ30)

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第229話知らない知らない分からないページ30

NOside

森「……なぁ。」

貴『なんだ』

頭を抑えながら、カンカンとボールペンを鳴らすA。

そんなAに、森羅が一つの質問を投げかけた。

森「…お前さ、本当に白装束の事、なんも知らねえの。」

森羅の言葉に、全員の動きが止まる。

今日は外に鳥もいないようで、部屋の中には静寂が響きわたった。

全員が、Aの回答を待つ。

彼女は少し考えるように黙ったあと、顔を上げて

貴『知らないよ。』

そう、森羅の目を見つめて言った。

しっかりと目線を合わせて言われ、森羅は少し狼狽える。

彼女が本当に何も知らないのだとしたら、烈火のあの言動は、一体。

貴『………知らない、筈だ。』

森「………は…」

Aのそんな回答に、森羅は呆けた顔で固まる。

そんな森羅に対し、Aは分からないんだと呟いた。

貴『知らない筈、私はあんな組織、関わった事もある訳が無いのに。

あいつ等は私の事を知っていた。

両親にしか言ったことの無いようなことまで。』

気味が悪いとAがつぶやく。

手で目元を隠して、俯いた。

その口元は笑っていて、たらりと冷や汗が流れていた。

森「…お前さ、前に言ってたよな。狂信者は迷い無く人を殺すって。」

それって、白装束の事だったんじゃねえの？

貴『………』

森羅の質問に、Aは答えない。

それにと森羅は続けた。

森「お前、あいつ等は消防隊に潜んでるかもとか、活発化してきてるとか、言ってきたよな。

……なんでお前、そんなにあいつ等に関して詳しいの？

なんでそんな事、予測できるわけ？」

答えろよ、A。

…そう責め立てる森羅に、Aはただ俯いた。

何故だなんて、答えられなかった。

……だって、そんな事、そんな事……

貴『分からない……』

…そう、Aが弱々しく呟く。

分からない、分からないんだと焦った声でAが続ける。

貴『知らない。知らない筈なのに、わかるんだ。予想がつくんだ。

あいつ等がどういう奴なのか…！』

あいつ等は、目的の為なら手段を選ばない。

森「っ、なんでそんな事分かるんだよ！」

貴『知らねえよそんな事！！』

Aが頭を抱えながら怒鳴る。

頭をボサボサにして、冷や汗をダラダラと垂らしながら、分かんねぇよと呟くAは、とても弱々しくて。

まるで、本当は気付いている事実から、必死に目を逸らしているように感じた。