喜劇で悲劇の人形劇第五幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ29)

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第228話信頼される人ページ29

NOside

だから、あなたの思うようにすればいいと思いますよ。

そう改めて言われて、桜備は手に持ったぬいぐるみを見つめた。

桜「……そう、なのかな…」

とんでもなくボロボロの黒いテディベア。

このテディベアを、捨てても、直しても、どうしても良いと。

桜備の決断なら、認めようと、そう思ってくれてるのであれば。

桜「……よし。」

そう何かを決意したように桜備はテディベアを抱え立ち上がる。

相談に乗ってのくれありがとうと火縄に言って出ていく桜備を見て、ようやくかと呆れたように笑って火縄も立ち上がった。

火「……本当に、あなたはすごい人だ。」

きっと、あの時ぬいぐるみを返したのが火縄や他の隊員だったならば。

Aはあんな事を言い出さなかっただろう。

それでも、あなたにならばと思わせるような力が、桜備にはある。

そんな彼に、尊敬の念をいだきながら、火縄は残っている書類を片付けに行った。

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次の日

森「な…なんで猫女がここにいるんだよ！？」

第八にそんな森羅の叫び声が響いた。

桜備曰く、環は星宮の件で謹慎処分が下され、謹慎中は第八が預かることになったらしい。

桜「環と二人が一緒なら、今回の報告書も作りやすい。」

貴『………』

桜備の言葉を聞きつつも、顔を上げずに報告書を書くA。

一方森羅はそいつにあまり近づかないほうがいいですよと後退った。

森「酷い目にあいますよ！」

環「何を！！」

そういったそばからつまずき森羅の上に覆いかぶさる環。

ラッキースケベに襲われた森羅は安息の場所にまた邪魔者が！と怒っていた。

森「ていうかアーサーはどこ行ったんだよ！！」

また叫ぶ森羅に、Aが静かに五月蝿いと注意した。

けれどその目線はやっぱり報告書に向いていて。

なんだか機嫌が悪そうだった。

報告書を書く手はスラスラと動いていたが、いつもはシャキッと伸ばしている背中を今日は肘をついて丸めていて。

チラリと机の下を覗くとずっと貧乏ゆすりをしている。

時折ボールペンがミシッと軋む音が鳴るのが怖かった。

桜「…気分が悪いなら気分転換してきていいからな」

片手で前髪をいじりながら報告書とにらめっこをするAに桜備が声をかけるが、結構ですと返事が返ってきてしまう。

ずっと顔を上げないAに、環が小さくいつもあんな感じなのか？と森羅に尋ねた。

森「そんな事ねえよ。今までこんな事無かった。」

…そう、白装束と関わる前の彼女ならば、こんな事は。