喜劇で悲劇の人形劇第五幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ23)

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第222話パチリと携帯は閉じるページ23

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貴『折角の縁だし、他隊の同期と連絡先交換してたってへんなことたぁねえだろ。』

環「…ま、まぁ…そうだな…」

そう言いながら連絡先を交換しだすAと環。

そんな二人を見て、森羅は驚きから思わず硬直してしまった。

森「俺ですら連絡先知らなかったのに…！」

能「あんな仲良かったのに？？？」

岸「じつは嫌われてたんじゃね？」

森「お前じゃねえんだからねえよ！！」

さり気なく酷いことを言いながら今まで教えようとしてくれもしなかったのにとグチグチと拗ねる森羅。

そんな森羅を見てAはあからさまにめんどくせえなという顔をしながらお前もメアドよこせと携帯を差し出してきた。

貴『お前等も。早く出せよ。』

そうジトッとした顔で見つめるAに、能登と岸理も慌てて携帯を出した。

岸「…つーか俺もいいの？」

貴『ここでお前と交換しねえのも変だろ。』

用事無いなら連絡してくるなよと冷たく言い放つA。

自分の発言に責任も持てないやつと楽しくお喋りする気は無いと説教を食らってしまった。

貴『私と仲良くしたいならまずうちの大体長に謝る事だな。』

岸「ゴメンナサイ…」

貴『私に謝っても意味ないだろ』

そう冷たくあしらって、Aは携帯をパチンと閉じた。

︙

森「お前って、意外と大体長の事慕ってるよな。」

そう、二人で帰路を歩きながら、森羅が話題を振る。

森羅な質問に、Aはそうだなと意外にも肯定を示した。

貴『あの人の事は、尊敬してるよ。』

私は、あんなふうにはなれない。

そう、Aが呟く。

どこか悲しくて、寂しそうな瞳に、森羅は思わず不気味な笑みを作ってしまう。

彼女がそんな顔をするのも、羨ましそうにそんな事を呟くのも、初めて見たから。

貴『現実を見て、でも理想は捨てず。

……かっこいいよ。あの人は。』

お前も成るならあんな人に成りな。

こちらの顔を見ず、一歩先に行く彼女がそう呟く。

顔が見えない。

声からも、上手く感情を読み取ることは出来なかった。

森「なれないなんて、事、ないだろ。

俺も、…あのバカだって、大体長には憧れてる。だから、」

貴『無理だよ。』

なれないよ。

そう言って、Aが静かに振り返った。

貴『ほら私、リアリストだから。』

そう笑う彼女の笑顔は、いつもの笑顔だったのに。

どこか冷たく、哀しげだった。