喜劇で悲劇の人形劇第五幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ18)

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第217話嫌なものから逃避行ページ18

貴方side

貴『……大丈夫。私が、ちゃんと鎮魂してあげるから。』

ニッコリ、そう笑って見せれば病田は面白くなさそうにこちらを見つめる。

あぁそりゃ、お前からすりゃ面白くないだろうな。

動揺してほしい相手がニコニコ見当違いな返答してんだから。

貴『(お生憎様、そんな姿こいつ等に見せられねえんだよ。)』

そのまましっかりした足取りで病田の元まで歩いていく。

病田は逃げない。

ただじっと、私の方を見つめてくるだけだ。

貴『本当に、ごめんな。』

そう、私が彼女の胸元に触れようとした、瞬間。

ガッ

貴『っ！？』

突然、触れようとした手を病田に掴まれた。

カ「A！」

貴『大丈夫です！』

心配するカリム中隊長にそう答え、

なんのつもりだと病田に静かに問いかけた。

病「ねぇAちゃん。鎮魂、楽しい？」

貴『………』

意味不明な質問に、私は答えない。

ただ見つめるだけの私を気にもせず、病田は尚も質問を続けた。

病「わざわざ火傷してまですること？」

貴『………』

病「Aちゃんが、しないといけないことなの？」

………………質問の意図が分からない。

鎮魂が楽しい訳ないだろ。

人を、殺すんだから。

…それでも、やらなきゃいけない。

"私が"やらなきゃいけない。

貴『当たり前だろ。それで被害者が苦しむことなくしねるんだから。』

上からクスクスと笑う声が聞こえる。

やっぱり優しいねえなんて馬鹿にするような声で病田は言った。

病「逃げたいとは思わないの？」

貴『………』

病「Aちゃん真面目だもんねぇ」

逃げられないよねぇ

可愛いねぇ

そんな風に馬鹿にしてくる病田に怒りは沸かない。

……だってもう、今更だから。

逃げるだなんて、事………

病「私は逃げるよ」

そう言われてはっと顔を上げた瞬間、掴んでいた腕で投げ飛ばされた。

ブワッと体が宙に浮く。

森羅達が心配してこちらを向いている。

確かこの後ろに柱があったはず。

足を後ろにやって柱に着地する様に勢いを殺す。

病「私知ってるよ！ヒカリ様、コアに触らなきゃ鎮魂できないんでしょう？」

そんな風に言いながら、冷却器を向けるカリムに柱に隠れる病田。

まずい、

まずい！！

病田を逃しちゃ駄目だ！！

病「そうだよね！逃したくないよね！

だって、鬼の私を鎮魂できない事が、」

今Aちゃんにとっていっちばん嫌なことだもんね！

……そう、病田は心底楽しそうな声で言った。