喜劇で悲劇の人形劇第五幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ14)

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第213話黒い両腕差し出す右手ページ14

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貴『…ま、これでもう撃って来ないとは思うが…』

そう真っ黒な腕を組んで空を睨むA。

そんな彼女の姿を、物陰に隠れていた森羅達はただ唖然として固まっていた。

暫くして、人影がいなくなったのを確認して、Aがもう大丈夫と言って振り返った。

貴『もう出てきても大丈夫ですよ』

環「大丈夫って…」

お前が大丈夫じゃないだろ…

そう引き気味に言った環に、Aは大丈夫だよと笑った。

貴『どうせすぐ治る』

そんなふうになんでもないように笑うから、ヒヤリと背筋が冷たくなった。

そんな事環を気にもせず、Aはフォイェンに大丈夫ですか？と少し心配げな表情で尋ねる。

ﾌｫ「私は…大丈夫、ですが…」

そう、止血された腕を掴みながら、フォイェンはAを見上げる。

血は止まってますねと確認して立ち上がろうとするAを、カリムが待てと止めた。

カ「お前の腕が大丈夫じゃなくて駄目だろ」

貴『大丈夫ですよ。言うほど重症じゃないんで。』

表面がコゲてるだけでそんなに焼けてるわけじゃないだなんて言いながら腕につく炭を払うA。

あまり傷口に触るなと言ってもAは大丈夫大丈夫と適当に流すだけ。

そんな彼女は右ポケットに手を入れながら、病田の前へと歩いていった。

病「あ、の…」

貴『ごめん』

気まずげな顔をする病田に、Aがそう謝った。

唐突な謝罪に彼女は目を丸くしたが、Aは変わらず真剣な表情で彼女に謝った。

貴『君をこんな事に巻き込んでしまって、本当にすまなかった。』

私に関わらなければ、こんな事にはならずに済んだのに。

そう目を伏せたAに、病田は驚いた表情のまま動けない。

…まさか、憎まれることはあれど、謝られるだなんて、思っても見なかったから。

貴『本当に、ごめん。』

……だから。

貴『白装束を抜けて、一からやり直してほしい。』

そう言って、ポケットから出した右手を、病田へと差し出した。

友達として、最初から。

……無理かななんて申し訳な下げに笑うAに、病田は嬉しそうな顔をして

病「はいっ！勿論！！」

そう言って、頬を赤らめながらAへと飛びついた。

病「(あぁ、なんて馬鹿なんだろう！)」

そう、病田はAをぎゅ〜っと抱きしめる。

なんて、なんて愛らしいんだろうと。

病「(私がAちゃんを追って蟲を入れられただなんて、ただの嘘っぱちなのに！)」

そんな嘘を信じきるAが、どうしようもなく愛おしい。