喜劇で悲劇の人形劇第四幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ44)

今日:9 hit、昨日:25 hit、合計:16,193 hit

第193話疑いとヒントページ44

NOside

貴『……と入ってもまァ、私もお前が森羅が見た手の正体だとは思ってない。

最初から撃つ気なんてないさ。』

ただの脅しさと、Aはそう言って銃口を下げる。

安全装置だって外してねえしなとチラリと見せられた銃の安全バーは、確かに下ろされていなくて。

本当に撃つ気はなかったことが伺える。

貴『こんな所で撃つわけねえだろ？』

そう言ってAは銃を袖の中へと仕舞う。

どうやらずっと隠し持っていたらしい。

森「…信用できるのか」

貴『私が見た限りはな。』

例えばと言って、Aはカリムに一つの質問を投げかける。

貴『もし神が人を殺せと言ったらお前はどうする？』

そんな意図の読めない質問を。

Aの質問に驚いて固まっていると、もう一度どうするんだ？と質問を投げかけられる。

殺すのか？

そう尋ねられて、そんなわけないだろうと慌てて否定をする。

カ「神は人の為にいる。そんな本末転倒な事はしねえ。」

貴『…ま、そういうこったな。』

そう満足気に頷くAに、森羅達は変わらずはてなマークを浮かべる。

そんな三人に気が付いたAは、人を躊躇なく殺すような人間はどんな人間だと思う？とまた意図の読めない質問をしてきた。

貴『…これはあくまで私の持論だがな。

私が思うに人を当然のように殺す奴は節夫の様な殺す事に快感を覚えるサイコパスか、

主(しゅ)や目的のためなら人を殺す事も厭わない狂信者の二つに分かれると思ってる。』

そしてカリムはそのどちらにも当てはまらなかった。

だから少なくともあの時の手とは違う。

そう思っただけの話。

貴『多少は信頼できると思うぞ？

言い方は回りくどいが話が通じない訳じゃない。』

当然のように人を殺す人間は、話の通じない狂人だからな。

そう笑ったAの目がなんだかとても怖く見えた。

貴『…そもそも、信用してなかったら態々あの時ヒントなんて与えない。』

ヒント？とキョトンとする二人に対し、何か気が付いた様子のカリム。

あの時、路地裏で話していた時、Aは何か言っていただろうかと頭を巡らせる。

カ「…"中隊長のローブ"だな」

森「あ…！」

路地裏にAが飛び込んできたあの時、彼女は言った。

"貴『少し前にこの路地に入る中隊長のローブが見えたので…』"

カリムを探しているだけならば、あの時態々"中隊長のローブ"と言う必要はなかったはず。

それなのに態々あの時そう口に出したのは

カリムの隣でローブに見を包む、犯人(烈火)にバレないよう、ヒントを与えるため。