第168話 親の鎮魂 ページ19
NOside
火「大隊長が現場に着いた時は、もうすでに焔ビトは鎮魂されていたんですよね？」
桜「ああ、俺の記憶が正しければ。」
火「その炎ビトは鎮魂されてるのに崩れてなかったんですよね？」
桜「…そう、だな…？」
立て続けに細部を質問され、曖昧になりつつも肯定を示す桜備。
火縄の考えが読めず、頭にはいくつものクエスチョンマークが飛んでいた。
どうしてそんな事を聞くのだろうかと不思議に思っていたが、次の火縄の質問に桜備はただ絶句することしかできなかった。
火「それはAが鎮魂した後のように、ですか？」
火縄の質問に、桜備は何も答えられない。
Aの鎮魂は特殊だ。
彼女の鎮魂はコアを破壊しない。
だからか、焔ビトもすぐに散って消えることもない。
まるで電源の切れた人形のように動かなくなり、ただの灰になってしまう。
そして、桜備が見たあの二人の焔ビトは、既にただの灰の塊へと化していた。
桜「そう、だ…」
ようやく、スカスカになった声でそう答えることができた。
口の中の水分が一気になくなって、上手く声が出ない。
あんな鎮魂の仕方をするのは、後にも先にもAだけ。
……と、言う事は
桜「(あの二人は、Aが鎮魂したのか？)」
たった10歳の女の子が、自分の両親を？
Aが入隊前から焔ビトを鎮魂していたのは知っていた。
でも、それでもそんな子供が一人で鎮魂をしただなんて、信じられない。
あの、泣いていた女の子が、自分の両親を
火「…そうなると、やはり両親のことがきっかけで鎮魂の能力に目覚めたと言うことでしょうか…」
桜「……そう、なのか…？」
直感的に、違うと、そう思った。
だってあの時Aは笑ったのだ。
驚き固まる桜備を見て。
泣くのをやめて、冷静に立ち上がった。
もしその時能力が発現して、意図せず両親を鎮魂してしまったのなら、あんな冷静な態度を取れるはずがない。
いや、そもそも目の前で両親が突然動かなくなってしまったとしても、すぐに死んだだなんて理解できるわけがない。
子供なら、なおさら。
けれども少女はそれをわかっていた。
両親が死んだことを理解し、彼等の死に泣いていた。
あの時、あの少女は、自分が両親を
桜「Aは、両親が発火するよりも前に、誰かを鎮魂した事がある…？」
第169話 知らぬあの子の抱える重圧→←第167話 詰問白状ごめんなさい！
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作者名：3度の飯より推しが好き | 作成日時：2022年2月3日 20時
