第150話 綿の中の手紙 ページ1
NOside
そのテディベアは、真っ黒な身体と左右違う色の瞳が特徴の少し小さめのテディベアだった。
子供が抱くのにちょうど良さそうなテディベアは、もうすっかり汚れ、ほつれ、綿が出ていて、どうして取っておいているのか分からないほどボロボロだった。
テディベアの紅色と朱色の瞳だけが、綺麗に輝いていた。
プ「持っているだけで壊れてしまいそうだな」
茉「でもどうしてこんな物が…？」
タンスにはそれ以上何か入っている様子もない。
他に収納する場所や物を隠す場所は無く、おそらくこの部屋にあるのは本当にこのテディベアだけのように思える。
生活品の他に、たったひとつだけあるテディベア。
それはどうやったって怪しさを拭えるものではなかった。
ｱｲ「このテディベア、後ろにファスナーがついてませんか？」
プ「ん？あぁ、確かに…だがこんなボロボロなものに何かが入っているのか…？」
そう言いつつも、火華はそのテディベアの背中のファスナーを下ろす。
開いた縫いぐるみの中には、同じくらいボロボロになっている紙と写真が入っていた。
開くのにも躊躇をしなければならないくらい、ボロボロな手紙。
そんな手紙を火華はそっと取り出して中を確認した。
全員、覗き込む様にして手紙を確認する。
手紙にはきれいな字でAへの遺言が記されていた。
愛しのAへ
きっと、Aが死んでいる頃には、私達はこの世にいないでしょう。
Aを一人残してしまうことを、どうか許してほしい。
この手紙は、パパとママのAへ向けての遺書です。
パパとママで、二人で話し合って一生懸命書きました。
どうか、この手紙を真剣に読んでほしい。
私達はAを愛してる。
きっと、お金に目がくらむ親族もいるでしょう。
Aへの遺産はこのテディベアに手紙と、写真、それからママの形見と一緒に入れておいたから、遠慮しないで使ってね。
これは全部Aのためのお金だから。
本当はAが大きくなる姿を近くで見ていたかったけど、私達はきっと白装束に殺されてしまう。
本当にごめんなさい。
Aにあんな辛いことをさせてしまって、それをすぐに止めることができなくて。
Aは＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ね。
どうか＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。
本当にごめんなさい。
でも、おがねがい。
白装束にだけには、捕まらないで。
AはAの＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。
愛してるよ、A。
あなたのパパとママより
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作者名：3度の飯より推しが好き | 作成日時：2022年2月3日 20時
