喜劇で悲劇の人形劇第二幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ40)

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第89話 "死"は常にすぐ側にページ40

NOside

まるで図ったかのようなタイミングでちょうどよくマッチボックスが第八へとつく。

車が車庫へと入る為バックしている間に、こう見えても、結構アンタの事、認めてますからとAは笑った。

貴『だから、死なないでくださいね。

社会的にも、物理的にも。』

そう言って、Aは立ち上がる。

車が止まると同時に、扉に手をかけた。

桜「A。俺は死なないぞ」

彼女の背中に、桜備は宣言する。

絶対に、死なないと。

………けれど

貴『死にますよ。人間ですから』

そう、彼女は答えて車を降りた。

また、"あの"声。

何を考えているのか分からない、どこか冷ややかな声。

節夫の時よりも柔らかいとはいえど、今、Aは、確かにあの時聞いた冷たい声を出していた。

桜「(どうして…)」

どうしてそんなにも悲しいことを、そんなにも冷たい声で言うのか。

桜備はどうしようもないやりきれなさでその場から動けず、ただ先程までAがいた場所を見つめた。

………Aが、分からない。

森「……勘違いしないでほしいんですけど、」

森羅の声ではっとして、彼の方を見る。

Aは、悪い奴じゃないんですよと、彼もAがいた場所を見つめながら呟いた。

森「Aは、死ねとか殺すとか、そういう"生死"に関する暴言が嫌いなんです。」

そういう言葉で、本当に死ぬ人が、本当に死にたくなる人がいるのだと、Aは激怒した。

それはもう、先程の節夫に対する彼女の様に。

森「勿論、"さっき"ほどじゃ無いですけど…

……いや、嫌いだからこそ簡単に人を殺す節夫が許せなくて、あんなにも怒ったんだと思います。」

Aは、"殺す"や"死ぬ"と言う言葉を冗談で言う事は許さない。

簡単に命を奪うことも、当然。

森「…逆に、多分あいつが殺すって言う時は本当に殺す時だけで、Aが、死ぬぞって忠告する時は、本当に死ぬと思った時だけなんです。」

節夫に対する言葉は、全て、本気で

桜備に対する忠告も、全て、本気なのだ。

森「…俺達は、無意識のうちに自分は、自分の周りの人間は死なないと、そう慢心してます。

でも、Aはそうじゃないんです。

本当に、本気で、明日は自分が、周りの誰かが、死ぬかもしれない。

そう思って毎日生きてるんです。」

今の時代、いつ、どこで、誰が人体発火を起こすかも分からない。

Aは、それを本当の意味で理解しているのだ。