喜劇で悲劇の人形劇第二幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ31)

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第80話異常な君を掴まえてページ31

NOside

もう一度、彼女の名前を呼ぼうと、口を開きかけたその時

節「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ！！！！！」

先程までAに痛めつけられていた節夫が、大声を上げて逃げ出した。

最初こそよろけたものの、軽々と外灯に飛び乗り空を飛ぶ節夫。

…それは本当に恐怖でAから逃げているようにしか見えないが、このまま節夫が改心するとはとても思えない。

バッとAがノーモーションで節夫を追おうと駆け出す。

桜「待ちなさい！！」

……けれど、それは掴まれたままの桜備の手によって阻まれた。

桜「森羅！焔ビトを追ってくれ。あいつに追いつけるのはお前しかいない」

森「は、はい！！」

私も行きますというAに桜備は駄目だと否定をする。

貴『私だって空は飛べます。』

桜「駄目だ。今のお前を任務に任せることは出来ない。」

貴『それは命令ですか』

桜「………そうだ」

桜備がそう言うと、案外あっさりとそうですかと身を引くA。

先程までの執着がなかったかのような態度に、更に恐怖を感じる桜備達。

異常だと、はっきり分かった。

あの時よりも、ずっと。

桜「…俺達も、焔ビトを追うぞ。」

桜備の指示に、はいと答えてマッチボックスに乗り込む茉希達。

その空気はまるで誰かの葬式の様に重苦しいものだった。

Aが桜備に引っ張られるように付いていくと、その後ろにやってきたアーサーが、突然Aから七式戦斧を取り上げた。

ア「こんな凶器はお前には似合わない」

どうしたのかと尋ねれば、そんな回答が返ってくる。

一体何が言いたいのかが分からず、Aは数秒アーサーの目を見つめたが、彼のことだ。どうせただそう思ったからそう言っただけなのだろう。

そう思い直したAはそうかとだけ言って答えた。

貴『………ところで、いつまで腕を掴んでるつもりですか、大隊長。』

桜「マッチボックスに乗るまでだ。」

貴『もしかして私が節夫を追いかけるとでも思ってます？』

信用ないですねぇと呟く彼女に振り向けば、彼女の笑顔はいくらかほぐれ、先程よりはずっとマシな顔をしていた。

まだ、"あの"笑顔の影がほんのりとさしてはいるものの、それでもいつもの彼女に戻ったと、少し、安心することができた。

まだ乗る前ではあったものの、彼女が落ち着いた事を確認した桜備は掴んでいたAの腕を放す。

そんな桜備にAはもういいんですか？という顔をして、桜備と一緒にマッチボックスへと乗り込んだ。