喜劇で悲劇の人形劇第二幕【炎炎ノ消防隊】 (ページ12)

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第61話余所見厳禁怪我注意ページ12

NOside

落ちる彼女の前髪が、風でブワリと持ち上がる。

Aが風で目を開けづらそうにこちらを見る。

普段は隠している右目の上に少し大きめの傷があった。

………けれど、そんなことが目に入らないくらい、桜備には惹かれたものがあった。

桜「(あ、綺麗…)」

いつもは見えない彼女の瞳

まるで鮮血のように、真紅のバラのように、紅く燃える宝石のように美しい紅(あか)。

そんな瞳に見惚れていれば、彼女の顔面はもう直ぐそこで、

ドサッ

桜「うおあっ！」

彼女を抱きしめるように受け止める。

彼女の落ちた衝撃は横へと受け流され、遠心力へと変わって回る。

それに引っ張られる様に桜備の体も回転し、そのままバランスを崩した彼は後に倒れてしまった。

桜「いっつつ…」

受け身をとり損ね、体を思いっきり地面に打ち付けた桜備は痛そうに呻くと自分に差す影に気が付いた。

貴『全く…あの程度の高さなら一人で着地できたのに。

……本当に、馬鹿な人ですね。』

そう呟くのは地面に手を付き、呆れた表情でこちらを見下ろすA。

風でボサボサになった前髪の間から、"あの"瞳が見える。

先程は気が付かなかったが、彼女のその瞳は左とは対象的に黒い瞳孔をしていて、深淵を彩る紅がよく映えていた。

普段は耳にかけている横髪が落ちていて、いつもとは違う、どことなく緩やかな雰囲気が、とても、綺麗で

桜「…可愛い」

貴『あ？』

茉「えっ」

森「はっ？」

桜「ん？」

はぁ！！！！？

っと周り(主にファンクラブ)から大きな声が上がる。

当然だ。こんな状況で、周りにAのファンがごった返しているこの状況で、彼女に逆床ドンされながら可愛いと言う行為がどれだけの自殺行為か。

桜「えっあ今俺声に出してたか！？」

貴『普通に言ってたが…アンタ頭打ってイカれたか？』

ﾌｧ¹「てめぇAに可愛いとかケンカ売ってんのか！！」

森「桜備大隊長までAの毒牙に…！」

茉「ラブコメ展開ですよ！！きゃー！！」

ﾌｧ²「Aは綺麗だろうが！！」

ﾌｧ³「ぽっと出のおっさんの癖に！！」

わーわーとそこら辺一体が大混乱。

まぁ当然と言えば当然だ。

皆のアイドルのAに床ドンされるという羨ましい状況で、彼女に可愛いなどとぬかしたのだ。

周りからのブーイングは酷い

貴『はぁ…馬鹿な事言ってないで起きてください。』

そうこちらに手を差し伸べる彼女は本当に呆れたという顔をしていた。