ヒロインになりたい。 (ページ20)

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それから少ししてコンビニで彼と会う頻度が減った

たまに行くとたまにいたり、いなかったり。

「最近忙しいの？」と聞くと、夏だからね。と言う彼

夏だから忙しい、意味が少しわからないがサークルやら課題やらで忙しいのかなって。

たまに会う、その日もいつものようにアイスを食べながらブロックに腰掛ける

「ねえそろそろ名前教えてよ」

「えー、気になるの？」

「わたしの名前知っててわたしは知らないのずるくない？」

「んー、そうだね…」

少し彼は考えて控えめに「こーき」と呟いた

「こうき？くん？」

「うん、そう、こうきくんです」

「ふふ、なんで教えてくれなかったの？」

「それは、なんとなく？」

謎な男のほうがなんか興味湧かない？って笑う彼

よくわからないけど、彼は「こうき」くんというらしい。

「どういう字書くの？」

「ひかるに、かがやくだよ」

「光輝？めっちゃ輝いてるね(笑)」

「そういう人生だからかな？(笑)」

「はいはい(笑)」

その日は2人でバニラのアイスを食べて、

甘くて喉が渇いた、と再びコンビニで水を買うことに。

光輝くんがお手洗いに行ってる間に、水を2本持ってレジに並んでるとレジ横にあった花火に目がいく

此処何年も花火なんか見てないししてないかも…

このご時世で花火大会も中止に例年なってるし、今年の夏はやれる機会あったらなあって、ぼーっとしてたら後ろから

「やる？花火」

「え？」

「やりたいんでしょ」そういってわたしの手から水をとってレジ横にあった花火も一緒に店員さんに渡した彼

「ちょ、お会計いいよ」

「…いらないから花火付き合ってよ」

ずるい、わたしが花火したいだけなのに。

彼はほんとうにずるい。

染めたことがなさそうな艶々な黒髪を耳にかけて、「ほら、花火しにいこ？」なんてわたしの腕を掴むから、もう。

2人で近くの川でさっき買った花火を開けて2人で火をつけて2人で笑い合う

そんな一夏の思い出、みたいなワンシーン

花火を持ってニコニコする光輝くん。

もう、わたしは自分の気持ち抑え切れない

「ねえ、光輝くん？」

「ん？」

「あのさ、「あ、火が消えちゃった、次線香花火しよーよ」

「あ…うんする」

花火の灯りで照らされた表情はなんとも言えない

複雑に控えめに笑った彼をみたら、わたしが言いかけた2文字は心の奥にしまうしかなかった。

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