112話お茶会 ページ19
リリィさんの反応とは違い、石のように固まる御園。
リリィさんも洞堂さんも褒めてくれたし、変な格好はしていないと思うのだけれど…。
ジロジロ見られるのも気恥ずかしいため、両手で抱えた花束を彼に突き付けた。
A「退院おめでとう。
あれっきりお見舞いに行かなくてごめんなさい。」
御園は我に返って、しどろもどろと受け取る。
すっかりと腑抜けて先ほどの気迫を失ってしまっている。
一体どうしたというのだ。
A「そうだ、リリィさん。
ご当主はどちらに…?
ご挨拶をしに行かないと…。」
リリィ「すみません。
今は不在でイギリスに。」
イギリス…なら仕方ないか。
御園と御国さんの父にあたる人だから、相当の変わり者。
もしくは、類は友を呼ぶということわざがあるくらいだから厳格で怖い人かもしれないと覚悟してきたのだけど。
それも必要なくなり、正直に言うと内心ホッとしている。
リリィさんは「ごゆっくり…」と扉を閉めた。
今度こそ部屋は二人っきりになった。
御園「つ、疲れただろう。
さっさと席に座れ。」
ぶっきらぼうに言い放しつつも、椅子を引いて私が座るのを待っている。
普段の彼からは想像もできないが、エスコートができるんだと感心する。
お互いに席がついたのを見計らい、まずはティーカップの中に紅茶を注ぎ、一口飲んだ。
この口いっぱいに広がるさわやかな香りと渋み。
____ダージリンだ。
A「これもやまねさんが?
やっぱり、ここの紅茶が好き。
淹れ方が違うのかしら…?」
御園「紅茶の淹れ方にはこだわりがあるそうだ。
やまねの紅茶が不味いわけがない。」
やたらと突き放すような返事が返きて私は少しムスッとする。
慣れない会話を何とか展開しようと、頭の中で話題探しを始める。
A「今日は突然来てしまってごめんなさいね。迷惑じゃなかった?」
御園「別に…。」
A「でも、よくこれだけの用意ができたわね。全部食べ切れるかしら。」
御園「貴様が令嬢であることも含め、客に手厚い持てなしをするのは基本だろう。
食べたくないなら無理しなくていい。残せ。」
A「…今日はいい天気ね。」
御園「午後から雨が降るらしいぞ。
まあ一時的だがな。」
……やはり怒っているのだろうか。
態度が素っ気ないというか冷たいと感じるのは気のせいか?
目線も合わせようとしないし、会話は続かない。
私は彼の気に触ることでもしたのだろうか。
私の中に不満の二文字が募った。
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レモンティー(プロフ) - 抹茶さん» 返信が遅れてしまい申し訳ありません。翡翠の真昼に対する思いや頑張る姿を褒めていただきありがとうございます。キャラの深掘りもどんどんしていきたいと思っています。私情や漫画(本編)の進行具合によってかなり時間がかかると思いますが今後も更新頑張ります! (2021年10月13日 4時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - ちゃちゃさん» コメントありがとうございます。長らく放置していたため返信が遅くなってしまい申し訳ありません。キャラの関係性は特に物語が発展するうえで頑張っている部分なのでそこに着目してくださるとは…めっちゃ嬉しいです! (2021年10月13日 4時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
抹茶 - 翡翠ちゃんの真昼や桜哉、御園との関係性がすごく素敵ですし、大好きな真昼たちのために少しでも支えになりたいと、頑張る翡翠ちゃんがとっても可愛くて、応援したくなります。更新、待っています。 (2021年1月23日 10時) (レス) id: f3d962ce08 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃちゃ(プロフ) - 小説すんごくステキです!さくや、御園との関係性最高です! (2021年1月2日 5時) (レス) id: f790642b1e (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - ありまさん» 大変失礼いたしました!更新や再度名前の確認をいたしましたが機能されているでしょうか?また、お名前の変換が(名前)のままになっていないかなども見ていただければ幸いです。ご不明な点がありましたらコメントでお聞かせくださいm(_ _)m (2020年3月18日 18時) (レス) id: a59b8a8518 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年3月14日 21時