赤目の少女と王子様～Part 2～ (ページ37)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:53,062 hit

☆86話★ ページ37

あれから15分くらいたった

これくらいならもう出ても大丈夫だろう。そう思った

『大丈夫…だよね』

私は恐る恐るドアを開けた

見える限りでは人は見えない

よし、と小さく呟き廊下に飛び出した

(早くコートに戻らなきゃ…！)

さっきのことは聞かなかったことにしよう。そう思いながら走り出した

だが…

？？「待て！」

その声とともに手をガシッと掴まれてしまった

『え…』

私は体制を崩し、後ろから倒れそうになった

(ダメ、倒れる…！)

ギュッと目をつぶり拳に力を入れて自分が地面にぶつかるのを覚悟した。…はずだった

『……。……？……え』

いつまでたっても倒れない。

それどころか何かに包まれているような…いや、“誰か”に包まれているような…

(もしかして…)

フワッと香ったローズの香りに私は“あの人”だと直感で感じとった

目をゆっくり開け上を向くと、思わず声を出してしまった

『あ…景吾…さん』

私の手を掴んだのは景吾さんだったのだ

しかも景吾さんはフッと笑いこう言った

跡部「俺様から逃げられるとでも思ったのか？あーん？」

私はだんだんと変な汗が流れてきた

(み、見つかっちゃった……あれ？)

しかも後ろからもう1人…

白石「跡部くんなんで女子トイレの前に…って（人2）やないか！自分が俺たちを盗み聞きしてたん！？」

そう、蔵ノ介さんにも見つかってしまったのだ

蔵ノ介さんは驚いた表情で…いや、どちらかというと焦った表情で私を見つめていた

『……はぁ』

(きっと何を言ってもダメだろうな…)

私はこの2人に言い訳はどうせ通じないだろうと思い素直に答えることにした

『その…保健室から近道しようと思って中庭を通ろうとしたら、お2人が話をしててそれをたまたま聞いてしまった…と言うわけです』

その言葉に景吾さんの顔が険しくなり、私の肩をバッと掴んだ

跡部「聞いたのか？…“全部”」

“全部”を強調して言ったことに疑問を持ったが、私はそれより言葉に迷っていた

(全部は聞いていない…でも何故“上代雪”が出てきたのか…それが気になる)

『全部は聞いていません…ただ』

跡白「「ただ？」」

…そこから先は言葉が出なかった

“上代雪”…。何故それを言っていたのか…口にして聞けなかった

『…いえ、内容は全く分かりません。安心してください』

(これでいいんだ…)

結局私は何も聞かなかったことにした