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ルクは相変わらず優しく丁寧に髪を結う。
それが心地よく、ついつい瞳を閉じてしまいそうになりながらもAはしっかりと意識を保っていた。
彼の膝の上はとても居心地が良い。
それこそ、布団のなかで丸まっているのと変わらないくらいに心が安らぐ。
この痛いほど幸せな時間がまた過ごせるようにと、永遠に続くようにと願いながらAは必死だ。
「ルクに後悔をさせたくない。私を吸血鬼にしたことで後悔をする姿を見たくない」
「お前…」
「ウルド様からも吸血鬼は呪われていると聞いた。簡単に身を落とすなどと言うなとも怒られた。だからこそ、ウルド様に頼もうと思ったの」
ウルドの話を聞いて思ったのだ。
この事に関してはルクに責を負わせてはならないと。
この呪い故にルクは既に一人、大切な人を失っている。
彼は臆病だったからだと語ることもあるが、決してそうには見えない。
ただ恐れているだけだ。
本当に呪いを分けてしまっていいのか、最愛の存在を血で呪ってしまって良いのかと。
人間であるAにとってそれは至極、当たり前の考えのように感じる感情の一つ。
だが、吸血鬼には馴染みのない恐れという感情。
それをルクはもて余しているように見える。
「ウルド様に頼むのかぁ…んーちょっと妬けるなぁ」
「それが一番良いって思ってる」
ウルドは唯一の理解者。
ルクとA、双方の事を理解し、時に厳しいことも言う彼だが信用は厚い。
幸い中立の立場のウルドが感情的になることもないため、根気よく説得すれば願いを叶えてくれるのではという漠然とした自信はある。
緊張で胸が破裂しそうになりながらも、つまること無く思いを吐き出したAはどこか安堵するかのように表情を緩ませた。
髪を結い終わり、手持ち無沙汰となったルクの腕はAの腹部に回る。
「まあ、時が来たら決める必要があった事だしなぁ」
ルクは机上に広げているものを一旦、端にまとめて寄せながら思慮する。
そして、暦が記載されているものをAに見せるように差し出し、今日はここだと指をさす。
Aはルクの一連の行動を不思議に思いながらも、指差された箇所の先を見ると何やら印がついていた。
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ぽっぽ(プロフ) - 続きが楽しみです!!! (2021年3月22日 23時) (レス) id: 16e5bc7bb2 (このIDを非表示/違反報告)
mami20030804(プロフ) - ルク様の小説がなかなかなくて悲しかったのですが、久々に占ツクを開いてみたら面白そうなお話が上がっていたので読んでみると本当に面白くて最初から最後まで1日で読んでしまいました。毎日今日は更新してるかなと気になって毎日開いています(^^) (2021年3月10日 22時) (レス) id: be7fc41ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - 続きが読みたい!!(クソデカボイス) (2021年2月5日 7時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2021年1月25日 1時