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数日前____
ウルドの部屋で彼の仕事を邪魔していた訳ではないが、何となく気乗りせず、膝の上に居るAを猫を愛でるかのように構っていたルク。
それを他所でやれと言いつつも、ルクがすぐに言うことを聞く性質では無いことを知っているウルドは仕方がなく黙認していた。
重要な話をするにもAが視界に入らなければ気を散らしてしまう彼。
少しだけ席を外させるか、このままで居させるか悩みつつも、後者の方が圧倒的に話が円滑に進むため、後者を選んだ。
「ルク、お前に仕事がある」
徐ろにに口を開いたウルドは概要を語り始めた。
ウルドから次の仕事の内容を聞かされた日の夜、ルクに寝かしつけられながら、Aはポツリとルクが前線に出る事への不満を口にした。
「んーでも、ウルド様も意図があって俺を出そうって決めたんだろうし」
「危ないの？」
「それは行ってみないとわかんねーよ」
そっと頭を優しく撫でられながら、Aはルクが語った言葉を反復していた。
ウルドの意図というのは一体どこにあるのだろうか。
常々聞かされてきた吸血鬼の中でも上位に存在する上位始祖の特別な立ち位置。
そんな存在が前線に出ないといけないほどに世界は荒れているのだろうか。
ロシアのワシリイ聖堂に居れば本当に平和だ。
第五位始祖のルクの寵愛を受けるAはサングィネムに居た頃のような扱いをされる事はなく、丁重に扱われる。
外の世界とは一線を画し、外の世界のいざこざを知らず、ルクとウルドの作る平和をこの場所で享受する毎日。
ひとり守られながらここに居ることをルクは望むが、他人の力に守られて過ごすのが果たして本当に平穏と呼べるのか。
それはきっとルクが前線に出ている間も続く。
ルクが体を張っている中、彼が流した血によって作られる仮初めの平和をぬくぬくと得るのはあまりに酷い話だと思うのだ。
こうして平和を得ることに罪悪感を感じる。
「無理しないでね」
「ウルド様と本気の喧嘩をする訳でもないし、そんな心配するなって」
「違うの…上手く言えないんだけど、ルクが前線に出るって思うと少し落ち着かない」
いまいちAの気持ちを汲みきれないルクはその言葉には答える事はなく、小さな体を引き寄せただけだった。
吸血鬼は心が無い。
傷ついても死ぬことがない。死ねない。
なのに何を恐れるものがあるのだろうか。
人間の方が遥かに脆く儚いと言うのに。
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こんぺいとう(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます！新しいものはあと一週間くらいで公開できるかと思いますので、もう少しお待ち下さい〜！ (2021年1月21日 20時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - おもしろくて勢いよく読みました！！！続きが楽しみです！ (2021年1月20日 9時) (レス) id: f5136f3fcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年11月8日 21時
