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肩から首にかけて残る歯形のような傷が甘やかに疼く。
そっと服の上から指でなぞった。
今まで、何度も繰り返してきた行為だ。
心身を捧げているかのような錯覚を覚えるこの傷が好きだった。
確かに尋常ではない痛みが伴ってはいたが、彼に血を捧げて得たのは底知れぬ満足感だ。
彼だけに渡した。
彼だけに許した。
他の吸血鬼に対してはあり得ないこと。
ルクを信用し、越えたのだ。
決して彼に許されてこなかった一線を。
傷を代償とも思わない。
血の欠乏による体調不良を代償とも思わない。
これは彼の側に居るための対価なのだ。
そして、自身を甘く縛る鎖。
「やっぱり、ウルド様に頼んでみる」
「だめだよ。お仕事じゃないのー？」
「お前と離れたくないんだ」
そう言って眉を下げながら、くしゃりと笑う様に不覚にも再び心が高鳴る。
更にきゅと体を引き寄せられたAは頬を緩ませ、それに応えるようにルクの広い背に手を添えた。
少しずつ、ルクからかけられる体重に傾く体を気にすることなく彼にすがって居れば、背からソファのクッションに落ちる。
柔らかな感覚が体を襲った。
「んーちょっとだけ、飲みたいかも」
Aの抱擁から抜け出したルクの瞳に見覚えのある、どろりとした欲が浮かぶ様が見てとれた。
覆い被さるようにしてAを見下ろす彼の赤の深さに感嘆し、小さく息を吐く。
今まで彼が生きるために飲んできた血を凝縮したような色をしている瞳がとても美しい。
Aは丸く美しいそれに魅力されながら手を伸ばすと、ルクはその手を握ってくれた。
手袋をした、大きな手にすっぽりと覆われる。
「美味しくないから…私のを無理に飲まなくてもいいよ」
「いいや、お前のが欲しいんだ。味とかじゃなくて、ただお前の血が欲しい」
ルクを支配する熱。
それの正体がわかった気がして、体の芯が震えた。
目前にある唇は今にでも触れそうなもどかしい距離を保っている。
戸惑いながらルクの薄く開く唇を見た。
その奥には鋭い犬歯が見えている。
だが、Aの体を支配するのは恐怖ではなく高揚感だ。
ルクが自身を求めてくれているという事に対して高揚感を感じている。
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こんぺいとう(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます！新しいものはあと一週間くらいで公開できるかと思いますので、もう少しお待ち下さい〜！ (2021年1月21日 20時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - おもしろくて勢いよく読みました！！！続きが楽しみです！ (2021年1月20日 9時) (レス) id: f5136f3fcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年11月8日 21時
