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ソファに胡座をかいたルクの膝の上に乗せられた状態で彼の書類仕事を手伝うのもだいぶ慣れたものだ。
せっせとまとめては整えを繰り返していると、ルクの手が止まった。
代わりに肩を後ろから抱きすくめられ、ぽんぽんと規則的に頭を撫でられる。
どうやら少々休憩を取るらしい。
今日は前日にウルドに押し付けられた書類の山をひたすら片付けるという仕事をこなしている。
あまりの量にルクは部屋に缶詰になるしか方法はないらしく、今日は殆んど構って貰えないかと期待せずにいたのだが、彼はこうして仕事をする片手間で頭を撫で構ってくれる。
するとすぐに心は舞い上がった。
高い鼻先を耳元や首元に押し付けられながら、ついくすぐったさに身体をよじる。
たまに口付けが混じるそれを一身に享受しながら腹部に回るルクの腕に手を重ねた。
「ふふ、くすぐったいよ」
「おい動くなって」
「んー…」
膝の上から落ちそうになったAを片腕で引き寄せたルク。
そのまま再び首すじに、耳元に、唇を寄せる。
ルクの空いているもう片方の手が、Aの頬を捉えた。
しばらくは親指で頬を撫で、その感触を楽しんでいたようだが、早々に別のものを欲した彼はその手を使ってAの顔だけを自身の方へと向かせた。
熱を孕んだ赤い瞳に気づいた彼女は静かに瞳を伏せる。
この頃はこうした触れ合いに慣れてきた様子を見せるAは照れを理由にそれを拒む事もない。
ルクはそっと口角を押し上げ、彼女を食らうために薄く唇を開いた。
____その時だった。
「おい、ルク。部屋にいるなら返事くらい……」
彼の上司にもあたる仏頂面の吸血鬼が顔を出した。
だが、間が悪い。
ルクが突然の乱入者に不機嫌になったのがAにもわかった。
「ちょっとウルド様ー」
「うるさい。追加だ」
ルクの抗議を受ける間もなく、彼は束になった書類をテーブルに投げるとすぐさまドアを閉めて去っていった。
追加の仕事に関して拒否権が無いことも十分に不満なのだが、Aとの大切な時間に踏み込まれたのが何よりも不満だ。
ルクはそんな不満を書き消すように、乱入者に驚いて目を白黒させるAへと少し強引な噛みつく口付けを贈った。
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こんぺいとう(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!新しいものはあと一週間くらいで公開できるかと思いますので、もう少しお待ち下さい〜! (2021年1月21日 20時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - おもしろくて勢いよく読みました!!!続きが楽しみです! (2021年1月20日 9時) (レス) id: f5136f3fcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年11月8日 21時