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書類を届けるという仕事を思い出してようやくウルドの部屋にまでやって来た二人だったが、Aは心なしか頬が赤い。
平静を装っているものの、機嫌はすこぶる良さそうなルク。
かき集めた後にただ上へ上へと重ねただけの資料を平然とウルドに提出した彼はどこか誇らしげに胸を張っているようにさえ見える。
「ずいぶんとここまで来る間に油を売っていたようだな。これを整理していたという訳でも無いのだろう」
「まあ、そうですねー」
「お前の言い分は何となくわかる」
そう言うと、ウルドはルクの後ろで縮こまるAをちらりと見たが、資料を突き返す真似はしなかった。
さすがのウルドにも温情はあるらしい。
それ以上は何も言わない。
だが、それに対して不服そうに顔を歪めた吸血鬼がいる。
来客用のソファに腰かけるレスト・カーだ。
「多忙なギールス様に資料整理までさせるんだ…？」
「事の発端は第三位始祖様でしょー？」
「違うよ。その後ろでびくびくしてる人間さ。僕を子供呼ばわりなんて笑わせてくれるよ本当に」
楽しそうな口ぶりに反して目が笑っていない。
「レスト・カー」
それに応じるようにして彼を黙らせられる唯一の吸血鬼が口を開く。
重く耳障りのいい声は吸血鬼のトップに君臨する彼の存在を体現するかのように、威厳があり空間に響く。
レストの中でAの印象が最悪なのにも関わらず、家畜呼ばわりしないのはA本人へではなく確実にウルドへの配慮だろう。
露骨な敵対心や警戒を顕にしながらも、ウルドが認めている者を相手に揶揄することが彼の意を否定することに繋がると彼は弁えている。
「でも、その人間は何のために置いてるんです？」
「ルクが拾ってきた。ルクに聞け」
「…はぁ？」
「育てたのもルクだ。その分、他の人間ほど愚かではない」
いぶかしむ視線は相変わらずだが、ウルドの一言で少しだけ不満げな表情が和らいだ。
「で、その人間は」
「俺の子でーす。可愛いでしょ」
「あっ…！」
引き寄せられるようにして肩を抱かれたAの顔はすぐさま茹で上がる。
口をはくはくと動かしながらも言葉を発せない様子だ。
まるで変なものを見せられたかのように顔を歪めたレストはため息をついた。
彼にとってはAが特別な人間だということ以外は何であろうがどうでも良いのだろう。
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こんぺいとう(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます！新しいものはあと一週間くらいで公開できるかと思いますので、もう少しお待ち下さい〜！ (2021年1月21日 20時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - おもしろくて勢いよく読みました！！！続きが楽しみです！ (2021年1月20日 9時) (レス) id: f5136f3fcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年11月8日 21時
