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「じゃぁ、また明日な」

「うん。…おやすみなさい」




短く挨拶を交わしぱたりとドアが閉まった瞬間、Aは腰が砕けたかのようにずるずるとその場にへたり込んだ。


普段通りを装うにしてはかなり大変だった。
今も早鐘を打ように鼓動がせわしない。


震える手を唇に持っていく。


冷たい感触が未だ尾を引くようにそこへずっと残っていた。
これはひとつの証でもあった。


真にルクの瞳がAを映し、認められ、唯一無二の彼女が彼の側に居ることを許された証。


明かりをつけていない部屋のなかでも頬だけでなく耳も顔も真っ赤に染まってるのがわかる。
こうなれば暫くは熱を持ったままだ。


自身の心を自覚したばかりの少女にとって、あまりにも刺激的な夜だった。


熱い頬に少し冷たい手を当て、必死に熱を冷ました。



結局、その夜は満足に眠る事ができなかった。
目を閉じる度、視界が闇に染まる度、ルクを思い出すばかりであまりに恥ずかしくそわそわとしてしまう。


やっと意識が眠りに落ちたと思ったときには、空の端が白じんでいた。






翌朝、案の定、寝坊をしたAは視界いっぱいに広がるルクの顔に驚き飛び起きた。




「ははっお前、焦りすぎだって」

「だ、だだだって!!」

「おはよ、ほら起きろ寝坊すけ。朝飯あるぞー」




布団を鼻の高さまでずりあげたと思ったらルクに容赦ない力で布団を剥がされる。


一気に冷たい朝の気温に晒されたAの体が震えた。
それにルクは表情を曇らせる。




「寒いか?」

「ちょっとだけ」




Aのために用意させた気温に対応するための冷暖房機器。
確かに外気と比べ、この部屋の空気は温かいいが朝の冷え込みには負ける。


何かまた用意させるかと思案しているうち、Aがベッドからもそもそと起き上がる。


そんな彼女へと羽織れるくらいのブランケットを渡し、朝食の配膳へと取りかかった。


こうして心穏やかな朝を迎えられるのはルクがAの側を離れて以来のことだ。


互いが互いに新しい日々へ期待を膨らませ、少しだけ落ち着かない気持ちになっていたことはルクもAも相手から感じ取ることはない。


それほどまでに二人は緊張し、自身のことで精一杯であった。

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こんぺいとう(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!新しいものはあと一週間くらいで公開できるかと思いますので、もう少しお待ち下さい〜! (2021年1月21日 20時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - おもしろくて勢いよく読みました!!!続きが楽しみです! (2021年1月20日 9時) (レス) id: f5136f3fcb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年11月8日 21時

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