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手袋をした大きな手が頬を触り、首を触り、手を触る。
取り上げたマグをベット脇のテーブルに置いた彼は何かを確かめるようにAへ触れ続けた。
やがて気が済んだらしい彼はぱっと手を離すと、Aが座るベットに腰かけた。
どうやらAの体が冷えていたのがひどく気がかりだったようだ。
「なあ、A」
「んー?」
ゆっくりルクの方へと首を振ると、思いの外彼の顔が近くに来ていて心臓が跳ねた。
また、手袋をした手が頬に触れる。
先ほどとはうって変わって、確かめるようにぺたぺたと触るのではなく、大切にガラス細工を触るかのような指先。
少しくすぐったい。
目を細めて耐える。
しっとりとした熱を帯びた瞳がなにを求めているのか、その視線の先に気づいたAはそっと瞼を下ろした。
とくとくと期待に高鳴る鼓動がうるさい。
とっくに気づかれてしまっているかもしれないその音をどうにか沈めようと手近な物を握った。
唇に触れる優しい感覚。
啄むよう施されるそれは、まるで優しく食べられているかのようでほのかに身体の芯が熱を持つ。
そっと後頭部を引き寄せられながら満足するまで送られるそれを受け取りつづけた。
薄着の上から相変わらず布団をかけられたままであったが、残りの中身を飲もうと手を伸ばす様はやはり端から見れば不思議な光景だろう。
少しだけ足りない距離はルクが補ってくれた。
先ほどよりは少し冷たくなってしまったそれを彼の手から受け取り、頬を緩ませる。
「本当に側に居てもいいのか。苦しく感じないか」
「大丈夫。ルクはちゃんと私を見てくれているもん」
そう言ってマグの中身を飲み干した。
どうやら残っていたのはごく少量だったみたいだ。
ルクは空になったマグを再びAから奪って机に置く。
いつものように身体を寄せようとすると待てと手で制される。
「あー…えっと、あまり俺に近づくのはなしな」
「だめ…?」
「だめじゃない……いや、だめなんだけど。あれだ、慎みってやつを持て」
彼は胸の内でよく分からない葛藤をしているらしく、言葉を選びつつ目を泳がせた。
「いつになったらいいの?」
「あのなぁ…」
「ルク以外にやらないならいいでしょ」
釈然としないルクに痺れを切らしたAは強引にルクとの距離を詰めるとその身体へと手を回した。
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こんぺいとう(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!新しいものはあと一週間くらいで公開できるかと思いますので、もう少しお待ち下さい〜! (2021年1月21日 20時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ(プロフ) - おもしろくて勢いよく読みました!!!続きが楽しみです! (2021年1月20日 9時) (レス) id: f5136f3fcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年11月8日 21時