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「………っ」
Aの表情を見たことで、ルクは我に返る。
人間のことに疎いルクでもさすがにこの行為が何を示すのかは理解していた。
なのに、後先を考えず自身の中で沸き上がる感情へ素直に従い行動をしてしまった。
戸惑う胸の内を隠しながら普段通りを装い、振る舞う。
未だルクに両手を拘束されているAは照れ隠しすら叶わず、顔を赤く染めるばかりだ。
それすらも嬉しく感じるのは罪だろうか。
そっとAの腕を解放すると、彼女はいの一番にごろんと身体を転がして顔を隠し、ルクの視線から逃れた。
それが少し寂しく感じたが、ルクは体を起こしてベットに座ると自身を落ち着かせるためにジャケットやタイの乱れを整える。
こんなにもどうしていいかわからないような、ぐちゃぐちゃの感情を孕むのは吸血鬼になって初めてだった。
三十年前にも似たようなものを抱えたことがあるが、あれとは全く別。
人間だった頃にあったかも知れないが、とうに忘れてしまった。
それと同時に、仮にも庇護する存在であるAへ手を伸ばしてしまったことに罪悪感が募る。
調子に乗ってまだ子供の彼女へとんでもないことをしてしまった。
ひとり、頭を抱えていると何やら背後でごそごそと衣擦れのような音がする。
そして、後ろの長いジャケットをきゅっと引かれるような力が加わった。
Aが握ったのだろう。
少し重い動作で振り向くと、顔をシワだらけのシーツに埋めたままルクのジャケットを掴んでいた。
表情は相変わらず見えないが、Aはルクが側を離れないようにと強い力で掴み離さない。
ルクが気まずさに負けて側を離れようとしていることに気づいている彼女は普段よりも更に遥かに強い力で握りしめている。
「行かないで…側に、居て」
シーツのせいでくぐもって聞こえる声がAの中にある戸惑いと、期待で入り交じる心持ちを表していた。
庇護すべき存在である彼女に酷いことをしてしまったのに、今すぐにでも逃げ出したいのに、その手を離してはくれない。
ルクは期待を寄せられても応えられないのだ。
未だ三十年前と今を無意識に重ねる事が多いことを、それをAへ知られてしまえば深く傷つくことを、強く理解している。
なのに、無駄な期待をさせてしまっている。
必死に掴んで離さないAを酷く哀れに思った。
今、彼女がその手で捕まえている吸血鬼は残酷なことをしているというのに。
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こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー！この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが１日１更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(＞＜)ずっと応援してます！更新楽しみにしてます！ (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます！ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー！ (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月24日 22時
