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早々にか細い両腕を押さえ込んだルクはAの首もとに顔を近づけ、すんすんと鼻を動かす。
相変わらず美味しそうな香りは香ってこない。
少しだけAを驚かせるためとは言え、興が削がれるようなそんな血の香りを嗅ぎ続けるのはあまり気が進まない。
早々にそこから顔を離し、先ほどと同じように鼻先が当たるほどの距離までずいと顔を寄せた。
重力に従って落ちるルクの前髪がAの頬を擽る。
ルクの目を逸らすなという指示を守り、見上げてくる視線はどこか狼狽しているような戸惑いを感じさせるものがある。
そんなものを目の当たりにしては更に苛めたくなってしまうではないか。
「なぁ、不味そうな血の香りはするけど、お前の血を飲もうと思えば飲めるんだぞ？」
「っ………」
「お前がこうやってくっついてくる度に吸血衝動に駆られて必死に耐えなきゃならない俺の気持ち、考えたことがあるか？」
静かに問いかけると、やっとルクの真意が伝わったらしいAは浅く息を吐く。
言葉が引っ掛かり、出てこなかったようだ。
「お前が際どい姿で歩き回る度に、一緒に布団に入ってはだけた寝間着から覗く肌を見るたびにお前に服を握りしめられたまま耐えなきゃならないんだぞ」
「ご、ごめんなさ……」
「俺はお前が思ってるような吸血鬼じゃないんだ。本質はもっと醜くて血を啜らないと生きていけない化け物とそうかわらない」
「でも…それでも、ルクと一緒にいたい」
「我が儘も大概にしろよ…？」
低く唸るように声を絞り出せば、Aは小さく震えた。
あぁ、そんな姿も可愛いななんて思う頭もあるが、生憎今はそういう場面ではない。
これはなにも理解していないAの罰だ。
「血が、欲しいなら…あげるから」
「じゃぁ今震えてるのはなんだよ」
「これは……」
「怖いなら言うな」
それでもまだ彼女は譲らない。
ここまで頑なだとは想像もしなかった。
何が彼女をそうさせるのか。
つい先ほどまでは孤独から救ったことによる恩情や孤独に戻りたくないが故の感情からくるものだと思っていたが、どうやらまた別の感情がそこには働いているらしい。
なぜそこまで共に居たがるのか、その必要性はあるのか、考えれば考えるほど分からなくなる。
恐怖と混乱の狭間でどう動くのが、どう言葉を発するのが正解か分からないAはルクの下でひたすら戸惑い、彼が次にどう動くのかを注視し続けていた。
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こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー！この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが１日１更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(＞＜)ずっと応援してます！更新楽しみにしてます！ (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます！ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー！ (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月24日 22時
