44 ページ44
夜も更け、寝間着に着替えたAはルクが横になっているベットに足を進めた。
珍しくルクが目を閉じているため、彼の眠りを妨げないようにそっと布団を捲って体を滑り込ませようとした。
すると突然伸びてきた手に腕を掴まれ、勢いよく引き込まれる。
驚いて声を上げる間もなくルクの腕の中へ収まってしまった。
「驚いたか？」
喉奥でくつくつと笑うルクの胸を押し返して反抗するが、吸血鬼の彼にとってはそれも戯れでしかない。
くるりと身体を器用に反転させ、ルクへ背中を向けるような姿勢で布団を引き上げるも、後ろから伸びてきた腕に絡め取られてきゅっと体を寄せられた。
首筋にルクの高い鼻が当たる感覚がある。
ぞわりとした感覚に身悶えながら手近にあった布団を握った。
こうやってルクが相手をしてくれる時間は嫌いではない。
寧ろ好きな方に分類されるくらいだ。
黒髪を撫で整える手の感触が伝わってくる。
とても心地の良い感覚だ。
優しい大きな手に安心感を覚える。
目を閉じ、それを享受しながら今日はこのまま寝てしまおうかと考え始めた矢先に腹部へと回した腕をルクが思いっきり引く。
当然、胴が締め付けられたことで唐突な苦しさに襲われたAは微睡みのなかに居た意識を急浮上させた。
「んー…ルク、苦しい」
「あー？」
「苦しいってば」
拘束がやっと緩められ、ようやく寝られると布団の端を引っ張った。
だが、体の半分は肌寒い外気に触れたまま。
なんやかんやと布団の中でしている間にとうとう端まで来てしまったらしい。
「ほら、こっち来いよ」
仕方なしにもぞもぞと動き、ルクの胸元で丸くなった。
背に回された手が撫でたり、指先だけで軽く叩いたり。
そうしてゆっくりと眠りに誘ってくれる。
大好きな吸血鬼の広い胸に抱かれて、痛いほどの幸せを噛み締めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー！この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが１日１更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(＞＜)ずっと応援してます！更新楽しみにしてます！ (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます！ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー！ (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月24日 22時
